マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン『Isn't Anything』 ケヴィンが明かすシューゲイザー革命の裏側

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(Photo by Paul Rider)

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下、MBV)の4タイトル新装盤CD/LPがいよいよリリースされた。Rolling Stone Japanでは日本盤ライナーノーツのために収録されたケヴィン・シールズの最新インタビューを2週連続でお届けする。『loveless』編に続いて、今回はデビューアルバム『Isn’t Anything』について。当時の制作背景だけでなく、独自のギター論についても語っている。聞き手は音楽ライターの粉川しの。


ーあなたにとってこの『Isn’t Anything』は、MBVの3枚のオリジナル・アルバムの中でどのように評価、位置付けられている作品ですか?

ケヴィン:まあ、あれが自分たちにとっての1stアルバムだったね。初めてスタジオで長く時間をかけたアルバムでもあったし、それに……あれはとにかく、なんというか、かなり自由で、実験的な時期だった。1988年の夏のことで……そうだな、もっとも楽に作れたアルバムだったのは間違いない。


『Isn’t Anything』ジャケット写真

ー『Isn’t Anything』は何度もリイシューを経ていて、本作は2012年のリマスター版と同じ音源になると伺っています。

ケヴィン:そう。

ーちなみに2018年にはアナログ・リマスター版も出されましたよね。

ケヴィン:ああ、限定エディションとしてね。2018年に『Isn’t Anything』と『loveless』のアナログ・ヴァージョンを出したけど、あれは僕たちのウェブサイト上でしか購入できない、数カ月限定で販売したものだった。以降は販売していないよ、あくまで限定版として出したものだから。

ーで、2012年版と2018年版の比較で言うと、今回(2012年版)の音源の特色、聴き処、あなたが特に注力した部分はどこだと言えますか?

ケヴィン:いや、アナログ・ヴァージョンには違いはないよ。アートワーク/パッケージに差はあるけれども、レコードそのものとしての内容はどちらも同じだ。ただ、『Isn’t Anything』と『loveless』のヴァイナル盤向けに、今年改めてカッティングをおこなってね。だから今回(のアナログ)は新しいカットだ。その意味では、うん、基本的に、このリイシューまで存在してこなかったアナログ盤(=発売当時のアナログ・プレスとも、2018年の限定版重量プレスとも異なる)ということになる。

ー今回の再発CD等のベースになる2012年版デジタル・リマスター、あれが、あなたが発表当時以降では初めてオリジナルのマスター・テープを使っておこなったリマスターだったんですよね?

ケヴィン:ああ、そうだね。

ーその2012年版リマスターをおこなった際に、あなたがもっとも注力した点とは?

ケヴィン:フム、そうだな。だから、僕が全音源に、あれらのテープ群に触れることができたのはあの時が初めてだったし、基本的にもっとも注意したのは、良いコンバータを使い、オリジナルのアナログ・テープを可能な限り最上の音質でデジタルに変換することだったね。うん、とにかくできるだけ良い音に仕上げた。あのリマスター作業に僕たちはかなり長い時間をかけたし、とてもうまくいったから、今回(2021年版向けに)僕がまたわざわざリマスターする必要はなかった、という。

Translated by Mariko Sakamoto

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE