デイヴィッド・バーンが語る『アメリカン・ユートピア』、トーキング・ヘッズと人生哲学

デイヴィッド・バーン(Photo by Kyle Gustafson / For The Washington Post via Getty Images)

ローリングストーン誌が2020年度のベスト・ムービー第3位に選出した、デイヴィッド・バーンのライブ映画『アメリカン・ユートピア』がいよいよ5月28日より日本公開される。同作で監督を務めたスパイク・リーやブライアン・イーノから学んだこと、トーキング・ヘッズ時代の「過ち」から長年のファンに思うことまで。バーンが忌憚なく語った。(※US版記事初出:2020年10月)

2020年のデイヴィッド・バーンは相対的に好調といっていい時期を迎えつつある。おそらくは彼自身もまた、ほかの世界全体と同様に隔離を余儀なくされているがゆえだ。新しい料理も覚えたらしい。「カントリーの歌にでもありそうだね。“さあ行くぞ、一人分のお料理だ”みたいなさ」。Zoomでの取材で、御年68才になるシンガーはそう笑った。「ものすごく美味しくできる時もあるし、失敗としか言いようのないものにしかならないこともある。だけど、そんなのは誰も知ったことではない。失敗作だって僕は食べちゃうよ。二度とやってみたりしないだけで」

だが、料理のほかにもやることが山積みで、バーンはとても忙しい。まずは「Reasons to Be Cheerful」(=元気でいる理由)の監修。これは彼の主導で始まった、もっぱら世界における前向きな変革だけを扱うことを旨とするウェブサイトだ。また、最近の彼は『アメリカン・ユートピア』の制作にも勤しんでいた。こちらは大成功を収めた同名ブロードウェイ公演の映画化作品だ。ここで彼は、実に表情豊かなミュージシャンたちを引き連れて、ステージの上を自由自在に闊歩しながら、自身のソロ作品や、トーキング・ヘッズのカタログからのナンバーを披露した。


映画の原案となったのは、2018年にバーンが発表したアルバム『アメリカン・ユートピア』。同作のワールドツアー後、2019年の秋に始まった舞台版の映像化を考えたデイヴィッド・バーンがスパイク・リーに声をかけ、映画化がスタートした。(©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED)

映画版の監督を勤めたのはスパイク・リー。舞台裏からの独特のアングルに加え、バーンの一座がジャネール・モネイの「Hell You Talmbout」を演奏するシーンでは、曲中の、不当な暴力の犠牲となったアフリカ系アメリカ人らの名前を繰り返す箇所に、その遺族たちのショットをかぶせるような演出が施され、ショウの全体にさらなる深みを与えている。

曲の合間にバーンは、聴衆らに投票を呼びかけ、人間の脳の能力を論じ、いかに自分が世界を違う視点から見られるようになったかを語っている。今回のインタビューにおいても彼は、自身のこの哲学を詳述してくれた。

Translated by Takuya Asakura

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