デイヴィッド・バーンが語る『アメリカン・ユートピア』、トーキング・ヘッズと人生哲学

デイヴィッド・バーン(Photo by Kyle Gustafson / For The Washington Post via Getty Images)


ブライアン・イーノとの共同作業から学んだこと

―トーキング・ヘッズ時代の「I Zimbra」の歌詞には、ダダイスト詩人のフーゴ・バルのナンセンス詩からの借用が見つかります。意味を為そうとすることを止めるべき(stop making sense)と考えるようになったのは、いったいどんな経緯があったのでしょう?

バーン:そんなふうに考えたことはまったくないけれど。娘にはまだ幼い子供が一人いてね。僕としては彼に、頭でサラダの水切りを使うやり方を身をもって示してやれていることに誇りを持っているよ。



(上)1983年、TV番組でのパフォーマンス (下)ブロードウェイ公演での模様

―ダダイズムの詩の採用を提案し「I Zimbra」を書くよう導いたのはブライアン・イーノだったと聞いています。彼とは長年一緒に仕事をされてきていますが、一番参考になったのはどんな部分でしょう。

バーン:僕らが組む場合は毎回違ったやり方を試す傾向にある。トーキング・ヘッズ時代にも一緒にやっているが、それはそれとして、まず『My Life in the Bush of Ghosts』(1981年)で組んだ時には、なんというか、傘連判(ラウンドロビン)みたいな具合になった。どちらが先かわからないんだ。誰かが行動を起こす。するともう一方が、その相手の行為に対して反応して動く。そんな具合に行ったり来たりを繰り返しているうち、そういった物事に対してお互いが為した些細な反応を基盤とした、ある種の構造ができあがってくるんだ。

ほかの作品の場合には、むしろある種の分業みたいだったこともあるよ。たとえば『Everything That Happens Will Happen Today』(2008年)では、サウンドは全部彼が仕上げていた。ただ本人がそれをどうすればいいものか、まだまったくわからないままでいたものだから、そこで僕がこう言ったんだ。「僕はこの音については何も触らないことにする。でも言葉とメロディを書いてこの上に載っける。だけど自分で音を足したりは一切しない」そういった暗黙の合意ができたところで、こうも言った。「だから君の素材はいじらないよ。ただ上に載っからせてもらう」この方法が実に上手くいったんだよ。そんな具合に毎回毎回、共同作業の新しいやり方を見つけ出している。


映画『ライド、ライズ、ロウアー』(2011年日本公開)より、『Everything That Happens〜』収録曲「One Fine Day」。同曲は『アメリカン・ユートピア』でもプレイされている。

―今もなお、あなたを感動させるのはどんな音楽ですか?

バーン:僕は今、10月に発表するプレイリストの作業をしている。これは全部カバー曲になる予定だ。中には誰も予想もできないだろうような曲もあるよ。ドリー・パートンが「天国への階段」を歌っているんだぜ。リジーという名前の女性アーティストは、フリートウッド・マックの曲(「ドリームス」)を披露している。ファーザー・ジョン・ミスティはレナード・コーエン(「アンセム」)だ。本当に予測不可能なものが入っているよ。

こういうカバーが上手くいくと、曲を作ったアーティストたちが、その曲から聴き取れていなかった要素を顕わにしてくれる場合がある。そういうのは大抵が削ぎ落とすことによって生まれてくる。歌というものにはそれ自体のグルーヴがあるし、楽器の編成やアレンジ、そのほかのとにかく、曲と一緒に聴くことにこちらの方がすっかり慣れてしまっている要素というものが伴われている。それらを全部引き剥がしすことで、その曲が本当は何を歌っているのか、初めて気づくことがあるんだ。



―最近、お気に入りの本は?

バーン:マーリン・シェルドレイクの『Entangled Life』というのを読み始めたところだよ。菌類の話なんだ。菌類というのは本当にそこらじゅうにいるんだが、どうも相応しい敬意なり関心なりを払われてはいないみたいだね。地下には菌糸体によるネットワークのようなものまであって、それが樹々やほかの植物たちの命とも密接に関わっているらしいんだ。だから菌類どうしだけではなく、そこにはある種の相互作用みたいなものも起きていて、樹々たちはだから、この菌類ネットを通じてほかの樹ともコミュニケーションが取れているというんだ。彼らはほかにも化学物質を宙に放つことである種のコミュニケーションを成立させている訳だが、その他に、地下で行われる情報交換も存在しているというんだな。いや、この本は実際、次から次へと驚かせてくれるよ。

Translated by Takuya Asakura

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