THE SPELLBOUNDが語る、ブンブン中野とノベンバ小林にしか表現できない「領域」とは?

中野は、宮崎駿と同じく「理想を失わない現実主義者」

―小林さんから見て中野さんはどういう人ですか?

小林 一番強く印象にあるのは、理想を失わない現実主義者だということで。

中野 ああ。

小林 現実主義者の人って、基本的に、理想との折り合いをつけていくものだったりして。でもそれって、折り合いをつけていく時点で理想が理想じゃなくなっているという生き方だと思うんです。それは人が選んだものだからとやかく言うことじゃないんですが、中野さんの場合は、単なる理想主義者の人たちとは違って、基本的に現実を直視している。でも現実を直視する代わりに自分は理想を絶対に失わないぞという強い信念がある。言ってみればものすごくロマンチストなんですけど、それが夢想じゃないというか。

中野 それで宮崎駿のことを出してたの?

小林 そうですそうです。

―「理想を失わない現実主義者にならないといけない」「理想のない現実主義者ならいくらでもいる」という、宮崎駿の名言。

小林 その話を中野さんにしたときがあって。というのも、中野さんがそれにダブるところがあるからで。僕は自分が渇望するような理想があるわけじゃないのに、現実をあまり直視しなくて、言わば快適な場所でふわふわしてたんですよね。ゆえに、生まれてくるものが、さっき言ってくださいましたけど「純粋なもの」というか、要は業に縛られないところからポッと出てきてしまうものだったりするとは思うんですけど、それって、ほんの一匙の現実の粒を投げかけられたら「うわ〜!」って慌てふためいてしまうような弱さがあると思うんですよ。

中野 (笑)。そんなに自分のこと蔑まなくていいと思うよ。

小林 作ってきた作品にはもちろん自信も誇りもあるんですけど。今目の前にあることを直視しようとしたときに、「こうあって欲しい」という目で見ちゃったりして、無意識の内に目の前にあるものを歪めてしまうんですよ。それは鏡に映った自分自身にも同じことが言えて。自分自身を無意識の内に弁護したり、こういうふうに考えられたら自分は傷つかないっていうほうに、まったく無意識の内に思考が曲がってしまっていたんですよね。

―小林さんから見て、中野さんはどういう理想を追い求めてる人ですか?

小林 やっぱり自分の感動だったり、ものすごく美しいものを作り出そうとして、そこに対して自分をごまかそうとしない。折り合いをつけそうな自分に対してまったく許さない。それって、葛藤があるがゆえにものすごくカロリーを消費することだと思うんです。中野さんは1曲作るごとに、ものすごいカロリーを使いながら冒険して、いろんな茂みで「うわ〜」って傷つきながらも、最後はオアシスに辿り着く、みたいな。

中野 そう見えてるんだ(笑)。

小林 そういう冒険を1曲1曲でやってるからこそ、それ相応の曲が上がってくるんだと思うんです。毎回「よくぞ辿り着きましたね」っていうふうに感動的でさえある。

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