THE SPELLBOUNDが語る、ブンブン中野とノベンバ小林にしか表現できない「領域」とは?

THE SPELLBOUNDならではのユニークな曲の作り方

―これまでに発表されている5曲はすべて「Lyric & Music THE SPELLBOUND」というクレジット表記になっていますが、実際、曲作りはどのように進めているんですか?

中野 曲ごとに、いろいろありますね。「FLOWER」でいうと、大喜利的に「マシン・ガン・ケリーみたいな曲を作ろう」って言って。絶対に着地点はそうならないって踏んでるからなんですけど、ちょっと悪ふざけでやってみようよ、って。そのくらい青春っぽいものをスタートラインに設定して、そういうビートをまず入れて、小林くんに「好きなように歌ってきて」って言うんです。小林くん的には小っ恥ずかしくてしょうがない、そんなコード進行弾いたことがないっていう、それくらい単純でストレートでなんのひねりもないものなんだけど、「それしか持ってない爽快感っていうのがあるよ、一回やってみなよ」って。小林くんは非常にクレバーなので、楽曲のプロファイリングが得意だし、楽曲の解析能力も高いんです。それで僕は小林くんから出てきたメロディをさっと配置して、小林くんが持ってる声とか雰囲気に合わせてコード進行を変えていって、広がりのある世界観にしていくみたいな。

小林 マシン・ガン・ケリー、僕、普段聴かないですからね(笑)。大喜利って言いましたけど、「中野さんがかっこよくしてくれるでしょ!」みたいな気持ちがあるから思い切って投げられるんですよ。昔の僕だったら同じ大喜利を出されても、全然出てくるものが違った。よくも悪くもマシン・ガン・ケリーに寄せたり、恥ずかさや疑いが出た活きの悪い歌になっちゃったりしてたと思う。今はこの大喜利を楽しめていて、パンクみたいなコード進行でメロディを乗せていくんですけど、僕の歌も元気がいいものが出てくるんですよ。

「FLOWER」MV



小林 あと、中野さんが映像的なプロットを提示してくれるのは僕の中ですごく大きかった。それと音楽が合わさったときにものすごく僕の中でギアが変わる瞬間が、どの曲でもあって。中野さんが音楽を描きながら、そこでどう歌うかっていうプロットが通底してるのが、すごく大きいような気がするんですよね。

中野 プロットだけは得意なんで(笑)。3、4分のポップミュージックの歌詞を書くためのプロットだけど、プロット自体は膨らませれば長編映画も作れたりするようなもので。

―そのプロットには、どこまで具体的に描かれているんですか?

中野 たとえば「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」は、都会を目的もなく、愛されてもなければ愛してもいない、虚な状態でとぼとぼ歩いている男がいて、実は反転したパラレルワールドでは、灼熱の砂漠の上でとぼとぼと歩いている。そこでなんで自分がとぼとぼと歩き続けているのかを考えたときに、誰かを愛することを諦めていない、実はこうやって何気なく歩いていることも目的があって歩いているんだ……という世界観。小林くんはすごく男の子っぽくて、サイバーパンク的な都会のディストピアの風景とかを上手に描くんですよ。僕はそれに血の通った人間性とドラマを、その背景の前にキャラクターとして登場させたいなと思って。その心情を小林くんが歌ったほうがいいなと思って、プロットを提示すると、小林くんがそれに応えてくれる、というキャッチボールをしてますね。

「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」MV



―ちなみに、「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」を、ブンブンの曲「On The Painted Desert」の曲名と重ねているのは意図的ですか?

中野 まあ意図的としか言いようがないですね。(「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」の)歌詞と曲を聴いて僕の目に映ったものが、あの「On The Painted Desert」だな、という感じがあったんですよね。最初は「THE DANCER」というタイトルだったんだけど、そのダンサーが砂漠の上を歩いている風景を歌詞の中から見たときに、「On The Painted Desert」の砂漠が浮かんだんです。

―ブンブンの曲名繋がりでいうと、そもそも「SPELLBOUND」という曲もブンブンの曲名であるわけですが、小林さんにとってこの曲はどういう曲なんですか?

小林 「TO THE LOVELESS」というアルバムが大好きだったというのもあるんですけど、やっぱりBOOM BOOM SATELLITESの曲名をバンド名にしたいなと思ったタイミングがあって、それでいろんなタイトルを並べていったんですよね。その中でお互いいろんな面でしっくりきたのが「SPELLBOUND」だったんです。いろいろかっこいいバンド名ありましたよ、僕のおすすめは「DRESS LIKE AN ANGEL」か「TO THE LOVELESS」とか。「それがバンド名、やばくないですか?」って(笑)。

―THE SPELLBOUNDの楽曲を作るときに、中野さんが今までやってきたサウンドやブンブンらしさみたいなものをどれくらい出すのか、もしくは新しいことをやるのか、そのあたりのバランスはどう意識されてるんですか?

中野 ああ、それほど意識してないですね。今出せる音とか、小林くんから受け取ったもので出来上がる音楽ということを考えているので、過去の自分がやってたアーティスト活動のファンが喜ぶようなことをというのは実はそんなに考えてなくて。今純粋に手を動かしたときに出てくるものを、という感じでやってます。

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