霜降り明星・粗品が語るボカロ文化への憧れ、芸人離れした本気の音楽表現

レーベル第1弾は「制作過程そのものが青春」

―ここからようやく今回の曲の話に入るんですが、3月31日に新レーベルから「乱数調整のリバースシンデレラ」という曲がリリースされました。この曲はどういうスタート地点、どういうきっかけから作っていったんでしょうか?

粗品:これも面白い曲を作りたいなと思って作りました。それとレーベルというのを立ち上げて、僕に今まで備わってなかった技術を補っていただける環境ができた。マスタリングしてくれるエンジニアの方、レコーディングしてくれるプロの演奏家の方と出会えた。そのパワーをフルに使った楽曲を作ってみたいというのと、あとは僕が大好きな竹達彩奈さんにどうにか歌っていただけないかという、この三つがスタート地点でした。

―竹達さんはどういうところが好きなんでしょうか?

粗品:仕事に対する姿勢と演技力ですね。何度かお仕事させていただいたことがあるんですけど、その時に痛感しました。竹達彩奈という方は、数多いる声優さんの中でもトップクラスのプロ意識で、どんなキャラクターでも自分が声を当てるとなったら、本当に愛を持って接してくれる。あとはシンプルに演技力もありますね。今まで僕は初音ミクに演技指導だけはできなくて、「こういうふうに歌ってくれ」って言えたことなかったんですけど、竹達さんにだったら言える。そこも楽しいですし、竹達さんは本当にすごいなと思います。

―そもそも、粗品さんは音楽活動としてもいろんな方向のアウトプットができたと思うんです。VOCALOIDもアリだし、自分で歌うのもアリだし、誰か歌い手をフィーチャリングで立てることもできる。でも、これはそのどれでもないですよね。「feat. 彩宮すう(CV: 竹達彩奈)」という、キャラクターボイスの名義になっている。こういう曲のアイディアはどう生まれたんでしょうか?

粗品:曲をやりたいと言うより、作品を作りたいなと思ったんですよね。「Hinekure」の時に確立したいなと思っていた「粗品の音楽は面白い」というコンセプトを最大限に表現できるのは、こういう曲かなと思って作り始めたのがこの曲なんです。だからこれはミュージックビデオの構想も同時に考えながら、曲も制作した感じですね。歌詞もストーリーになっていて、MVを見たら面白いと思っていただけるじゃないかなという構造になってます。



―この「乱数調整のリバースシンデレラ」という曲のストーリーはどういうものなんでしょうか?

粗品:シンデレラの男女逆の話で、お姫様が街中の紳士諸君を舞踏会に招いて運命の人を見つけるというストーリーなんです。シンデレラと同じく運命の人が12時にどこかに行っちゃって、ガラスの靴しか残っていない。そこで、乱数調整というランダム要素を故意的に調整できるシステムが出てくる。歌詞中に数字がめっちゃ出てくるんですよ。そこから考えました。

―「乱数調整」というのが大事なキーワードになっている。

粗品:そうですね。あの時にこういう動きしたから運命が決まるというのをやっていくという。あとは、「リバースシンデレラ」の「リバース」には男女が逆という意味もあるんですけど、もう一つの意味がMVの最後にわかるんです。

―最後は声が途切れて調も変わりますね。

粗品:そうなんです。ラストの7小説はぶった切ったんで、曲だけ聴くと「変なことになってるな」って思われると思うんですけれど、そこをMVで見ていただきたいですね。曲が竹達さんの吐息で終わってるのも「そういう意味か!」みたいになるので。

―楽曲の制作過程についてはどんな感じでしたか?

粗品:感動しましたね。VOCALOIDの時の作り方と同じで僕が最初打ち込んでデモを作るんですけど、そこからが未知数でした。まずギターとドラムを生音で録音させていただけることになって、それもReiさんというギタリスト、石若駿さんというドラマーと、同い年のめちゃくちゃすごい方に協力していただけた。そのレコーディングも立ち会って、初体験だったんですけど、夢見心地でした。すごかったです。

―Reiさんはトップギタリストですし、石若さんはトップドラマーですからね。

粗品:そうですよ。そういう方が僕のヘボい譜面をプリントしたやつを持って、やっていただいてるって時点ですごいことですし。本来だったら何らかのディレクションをすべきなんでしょうけど、それもほぼなかったです。その後は僕が自分で打ち込みをやっていくんですけど、今回ミックスとマスタリングもエンジニアの方にお願いしたんです。だから、これまでは調整がとれなくて諦めてたヒャダインさんみたいに音をいっぱい重ねる作り方もできた。まさに環境に恵まれて、この3カ月間の制作過程そのものが青春くらいの曲になりました。

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