アレサ・フランクリンのアルバム『Lady Soul』をマリアージュ、鳥居真道が徹底考察

音の差異を聴き分ける力がついてくるとディティールに耳がいくようになります。私の場合、楽器の演奏に強い興味関心があるので、気がつくとドラムのパターンやベースラインを追っかけて聴いています。さらにギターを演奏して長いので、ギターの音に耳が反応するようになっています。

最近になって、長年アレサ・フランクリンのアルバムを愛聴してきたにも関わらず、アレサの歌をあまり聴いてこなかったことにふと気が付きました。そこで、アレサの歌唱に意識のフォーカスを向けて聴いてみよう、と考えても良いところですが、今回は歌とオケを分離せずにトータリティを保ったまま味わってみたい。美食家が言うところのマリアージュを楽しみたい。

ここでアレサのアルバム『Lady Soul』のジャケットを一度見てみましょう。アレサが左手でマイクを掴んで口元に寄せている写真です。左側の頬はマイクで隠れてしまっています。物理的に見えない状態です左側の頬を見るためにはカメラのアングルを変えるかマイクをどかしてもらう必要があります。



たとえば私がアレサの歌唱を聴くことに専念したとしましょう。しかし、それで物理的に他の音が聴こえなくなるということはありません。ボーカルを作品におけるヒエラルキーの頂点に位置づけて、ボーカルにのみスポットライトを当てようとしたところで、ボーカル以外の音が物理的に消えることはありません。それは、あくまで聴取する側の気持ちの問題に過ぎないのです。

こうした恣意的な切り分けを反転させて、恣意的に切り分けないで聴いてみようというのが今回の試みです。そして、その補助線のひとつとなり得るのがリズムだと考えました。

Rolling Stone Japan 編集部

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