「闘うクビドル」伊藤麻希がプロレスデビュー4年目で見た輝く「世界」

伊藤麻希(©AEW)

いまや国内よりも海外での人気が高まっている、日本の女子プロレス。ASUKA、紫雷イオ、SARRAY(Sareee)、志田光、里歩など、数多くの選手が海外で活躍する中、急激に知名度を高めているのが、先日AEWに電撃参戦を果たした“The Cutest In The World”伊藤麻希である。

「CyberFight Festival 2021」で、プロレスデビューしたSKE48荒井優希との対戦が予定されている彼女もまた、アイドルからプロレスラーへの転身を果たした一人だ。すでに世界へのパスポートを手にした伊藤麻希が歩んだ道程を紹介しよう。

「誰とも目が合わなかった」アイドル時代の辛酸を経て

彼女が人生初の声援を浴びた場所は、両国国技館だった。プロレス団体DDTのビッグマッチに、“公認凶器”として参加したのである。2013年8月のことだ。

「アップアップガールズ(仮)」や「しず風&絆~KIZUNA~」、新田恵利といったアイドルたちが任意の武器を手に取り、応援する選手と共に闘う“アイドルランバージャック”なる、DDTらしいユニークな試合形式。福岡を拠点とする「LinQ」の一員としてこの試合に参加した伊藤麻希は、終始DDT代表の高木三四郎を狙い続け、強烈な頭突きを連発する。



他のアイドルたちの存在はもちろん、勝敗をも無視するかのように場内を駆け巡る彼女の姿に、観客は熱狂した。この大会で、もっとも印象に残るシーンだったと言っても異論は少ないだろう。

筆者のようにアイドル事情に疎いプロレスファンなら、誰もが思ったはずだ。この人こそ、「LinQ」の中心メンバーに違いないと。

しかし、それは事実とはまったくかけ離れた誤解だった。

伊藤:本当に人気がなかったんですよ。ライブ中も、観客とまったく目が合わない。つまり、誰も伊藤のことなんて見てないんです。もちろん、コールなんて受けたこともない。だから、両国国技館で浴びた何千人もの「伊藤」コールは本当に嬉しかった。自分のことを観てくれる人がいることを感じた、初めての経験だったから。

「LinQ」での不人気ぶりを見かねた事務所の社長が、大会への参加を勧めてくれたのだという。もちろん、それまでプロレスにはまったく興味がなかった。

伊藤:だから、あの試合のことは正直ほとんど覚えてなくて。気づいたら頭突きしてたって感じ。とにかく、高木三四郎にだけは負けちゃいけないっていう気持ちで闘ってたことだけは確かだけど。

そんな彼女が、正式なプロレスデビューを果たすのは2016年12月のこと。両国国技館での体験から、約3年のブランクがあった。



伊藤:(プロデビューしなかったのは)単純に勇気がなかったってのが本音だけど、このまま福岡でアイドルやってても、誰も活かしてくれないって想いが、年々高まっていたのもありますね。バラエティー番組なんかにも少しだけ出始めてはいたんだけど、全然面白いことが言えないんですよ。プロレスでもやってみれば、(アイドルとしての)引き出しが増えるんじゃないか? と思ってたのが、正直なところです。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE