米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

父と子の最後の会話

CIDによるとデュマスとラヴィーンの事件の捜査もFBIが引き継いだ。2月2日、シャーロット市出張所は2人の男の死の直前の動向について市民から情報提供を求めた。彼らが知り合ったきっかけや関係性は依然謎のままだ。「ビリーの友人や仲間は大体会ったり話したりしたことがあります。デュマスという名前は聞いたことがありません」と彼の父は言う。ニコールさんとローラさんも同様だ。今判明している2人の共通点はフォートブラッグしかない。

「彼らが遺体として発見されるまで何があったのか、どんなことでもご存知の方はご連絡ください」とFBIのスポークウーマン、シェリー・リンチ氏は言う。FBIは「別の場所に放置されていた」デュマスの暗い青色の2015年型ダッジ・ラムと、彼本人の顔がよりはっきりと写った写真を公開した。レストランと思しき場所で紫色のワイシャツに灰色のベストを着た姿が写っている。

アメリカ国内の新型コロナウイルス感染者が100万人を超える直前の4月11日、デュマスはウィンストン・セーラムで逮捕された。今度は不法侵入、脅迫、官名詐称の3つの容疑がかかっていたが、全て起訴されずに終わった。6月20日、カーセッジのマクドナルドで食べ物の入った袋を持った女性を殴り、その場で逮捕された。最後に逮捕されたのは9月17日、ファイエットビルで買春の容疑がかけられていた。いずれも起訴されたという記録はない。

2020年の狂乱が落ち着くのに連れ、薬物乱用や暴力事件が全国的に急増し出した頃、ラヴィーンの様子もおかしくなっていった。レシカー殺害以降、彼は負のスパイラルに陥っていた。「短期間で随分変わってしまいました」と事件後一緒にいるためにミシガン州から来た父は語る。「考え事をしているようで、ずっと宙を見つめています」。独立記念日に花火を見に息子とフォートブラッグに行き、打ち上げが始まると「すぐにここから逃げなければならないと言い出しました。幻覚を見ていたようです」

2カ月後、ラヴィーンの家を訪ねていた人物がヘロインの過剰摂取で死にかけ、駆けつけた警察にコカイン、電子計り、吸引パイプ、リボルバー、猟銃、短銃身ピストル、ポンプ連射式散弾銃の所持で逮捕された。翌日、脱獄犯の蔵匿と薬物の製造を行う場所及び道具の所持で起訴された。脱獄犯が誰で、何の刑から逃げたのかはわからず仕舞いだったが、カンバーランド郡はラヴィーンに対しての全ての起訴を取り下げた。州検察官のビリー・ウェスト氏はコメントの依頼に応じなかったが、ラヴィーンの家にいた別の人間2人が薬物の罪を問われているとファイエットビル・オブザーバー紙に話した。

「まだまだ現役の立派な軍人なのに悪い人とつるんで、薬物を使う量も増えて、いろんな警察沙汰に巻き込まれていましたが、誰も止める人がいませんでした」とレシカーの母、タミー・メイビーさんは語る。

2020年2月17日に日付が変わった1分後、ラヴィーンはファイエットビルで女性が運転する車にトラックで突っ込んだ。現場から逃走し、轢き逃げで起訴された。逮捕状が発行され、今回はどういうわけか起訴が取り下げられなかった。しかし、出廷予定日を前に遺体で発見された。

父が彼と最後に話したのは感謝祭の日だった。「比較的普通」に振舞っていたが「落ち着きがなく」「うわの空だった」と言う。退職の申請が出来るまで残りわずか2カ月。37歳という若さで、軍に20年勤めたため、今後一生年金をはじめとしたあらゆる手当てが受けられるようになる。「帰って来てうちの敷地内にログハウスを建てるつもりでした」と父は語る。「それが最後の会話でした」

Translated by Mika Uchibori

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