米陸軍エリート部隊、上層部がひた隠しにするタブーの正体

同じ隊員たちでコカイン三昧

高校を卒業してすぐの2001年2月、無料の視力矯正手術と新しいオフロードバイクを買う金欲しさにビリー・ラヴィーンは陸軍に入隊した。すると9.11が発生し、アメリカ史上最長の戦争が始まった。「彼は毎日楽しく過ごし、これを一生の仕事にすると決めました」とビリーがスケートボードやモトクロスをして育った、遠く離れたミシガン州のアッパー半島に今も暮らす彼の父が言う。ビリーは2006年に特殊部隊に入隊し、グリーンベレーに入り、その後10年間平均して年に1度は戦地に派遣された。

その頃の彼の出征先を、父も常には把握出来ていなかった。「ソマリア、イラク、アフガニスタン。アメリカが2006年から2018年の間に関わっていた場所ならどこへでも行っていました」。2012年には数多のレンジャーやグリーンベレー隊員が挑戦するも関門をくぐれるのはほんの一握りである、最精鋭部隊デルタフォースに入隊した。

その年の5月、彼は同じく北部出身の頑固な男マーク・レシカーと出会う。アイダホ州の田舎で生まれ、ワシントン州のカナダとの国境近くで育ったレシカーはラヴィーンの2つ下で、Qコースと呼ばれるフォートブラッグの過酷な殊部隊入隊試験を合格したばかりだった。2人はすぐに親友となった。

「もはや兄弟のようでした」と2018年2月に2人と3週間ほど過ごしたレシカーの妹、ニコールさん(31)は言う。海軍の潜水艦乗組員である夫とノースカロライナ州に引っ越す際、レシカーの家に一時期泊めてもらっていた。「兄はどうしても私に会わせたい人が2人いました。そのうちの1人がビリーでした」

スピリチュアルライフコーチでレイキ(レイキヒーリングは民間療法であり、エネルギー療法の一種)について教えているニコールさんによると、ラヴィーンは兄が普段付き合っている非番の兵士たちとは違っていた。「私は争いごとを好みません。戦争なんかより平和な世界を望みます。ビリーは私と考えが似ていたようで、他に紹介された特殊部隊員と比べると変わった人でした」

パブリックドメインとして唯一公開されているラヴィーンの写真、つまり陸軍公式の個人写真に写る彼の頭はまるで白い卵のようだ。髭と髪を剃り落としたばかりなのか顔色は悪く、やつれた表情をしている。「ひどい写真です」とニコールさん。「まるで死人みたいです」。実際は背が高く、坊主頭に綺麗に整えられた髭を貯え、ハンサムだったと言う。「兄と顔立ちがよく似ていました」

ほとんどの写真に髭を生やしたしかめっ面で写るレシカーは身長約193センチ、髪は明るい茶色で顎は四角く、肩にはタトゥーが入っていた。「頑固で自己中心的な男でした」とハワイ出身でパラリーガルとして働き、元海兵の父を持つ妻のローラさん(39)は第一印象を振り返る。しかし、そんな彼が「だんだん好きになった」と言う。

どちらの男にも幼い娘がいた。離婚後何人もの女性と交際しては別れていたラヴィーンは「父親でいるのが好きだった」とニコールさんは言う。兄も同様だった。レシカーは実に男性的な男だったが、可愛い娘にお茶会にはドレスを着て来なければならないと言われれば、文句一つ言わず「自分に合ったサイズのドレスを買いに行きました」とローラさんは語る。

ニコールさんも夫との間に幼い子供がいた。子供を預けられる友人やベビーシッターがいれば、30代半ばの5人はファイエットビルの都心部に出かけた。「ぶっちゃけると、私とビリーとマークでコカインもやりました」と彼女は言う。

他の特殊部隊員がコカインを吸入しているところも複数回見たそうだ。「他にも一緒に飲んで遊んでいる人たちがいて、皆どうやらビリーをはじめとする共通の知り合いがいたようです」

ローラさんの話もニコールさんのと同様の内容だった。「私の前でも他の隊員たちと一緒にコカインを使っていました。ビリーの家に入るとそこら中に散らかっていることもありました」

彼女も「毎回同じ4人組」が白い粉で線を引き鼻から吸うところを「2、3度」直接目撃しており、全員デルタフォースの同僚だったと認識している。というのも、彼らをそう紹介されたことに加え、訓練の後車で家までラヴィーンを送って来たことや、参加した作戦についてふざけて話しては互いをやり込めようとしていたことがあったからだ。「お前42人殺ったんだって? 俺120人だから」とローラさんが男の低い声を真似る。

USASOCのスポークスマン、テイジ・レインズフォード大佐はデルタフォース隊員のコカインやMDMAの使用や薬物検査の有無についての書面での取材に応じなかった。JSOCの報道官カラ・スールズ大佐も同様だった。

Translated by Mika Uchibori

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