Jay SomとPalehoundが意気投合、Bachelorで見つけた友情とブリーダーズ愛を語る

バチェラー(Photo by Tonje Thilesen)

ジェイ・ソム(Jay Som)ことメリーナ・ドゥテルテと、ペールハウンド(Palehound)ことエレン・ケンプナーがスタートした新プロジェクト、バチェラー(Bachelor)によるデビュー作『Doomin’ Sun』がリリースされた。

本作は、カリフォルニア州トパンガに住宅を借りた2人がおよそ2週間かけて作り上げたもの。ビッグ・シーフ(Big Thief)の司令塔バック・ミークとジェームズ・クリヴチェニア(Dr)、チャスティティ・ベルト(Chastity Belt)のアニー・トラスコットら、彼女たちの友人やパートナーも時々顔を見せてはアルバム制作を手伝い、ピクシーズやブリーダーズ、コクトー・ツインズらへのオマージュがふんだんに散りばめられたソングライティングと、クィアネスや気候変動をテーマに取り上げつつもユーモア感覚に溢れた歌詞世界が印象的な良作に仕上がっている。

来る6月11日には、彼女たちがホストを務めるオンラインフェス「Doomin’ Sun Fest」が開催され、エイドリアン・レンカー(ビッグ・シーフ)やチャスティティ・ベルトはもちろん、ジャパニーズ・ブレックファストやジュリアン・ベイカー、コートニー・バーネットなど痺れるメンツが参加するという。そんな二人にプロジェクト結成の経緯やアルバム制作のエピソード、「Doomin’ Sun Fest」への意気込みなど聞いた。


左からペールハウンドことエレン・ケンプナー、ジェイ・ソムことメリーナ・ドゥテルテ(Photo by Tonje Thilesen)


─まずはメリーナにお礼を言いたくて。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くのバンドが来日をキャンセルする中、まさにギリギリのタイミングでジェイ・ソムの来日公演を敢行してくれましたよね。

メリーナ:こちらこそとても良い思い出になったし、アジアツアーの中で東京公演が特に印象に残っているんだ。大阪でのライブが終わってすぐに東京に移動したんだけど、ちょうどその日(2020年2月26日)に日本政府から規定以上の人数が集まる会場でのイベントの中止要請が出たんだよね。

私たちは予定通りライブをすることができたんだけど、お客さんが全員マスクをしていて、私もバンドメンバーもその光景に少し圧倒されてしまったのを覚えてる。でもみんな本当にいい人たちばかりで、礼儀正しくて、声が出せない代わりにたくさん拍手をしてくれて……。オープニングアクトのHomecomingsもすごく素敵なバンドだったよね。



─そこから今日まで、世界中の人たちがコロナ禍とそれに伴うロックダウンで大変な思いをしてきました。メリーナとエレンはロックダウンの期間、どのような過ごし方をしていましたか?

エレン:私はずっとギターの先生としてレッスンをしていたのと、あとはこのアルバムの制作に時間を使っていた。1年前はミックスをやっていた時期で、その作業で忙しくしていたし、残りの時間は1人でレコーディングスタジオに入って、プロデュースのスキルを上げられるように勉強したりもしてたよ。

メリーナ:私も同じような感じ。ほとんどずっと制作をしていたから、その関係で他のミュージシャンたちとオンラインで共同作業をしたり、あとはいつもよりたくさんTVを見たり。『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』にはまって、もうすぐ全シーズン見終わるところ(笑)。

エレン:私はかぎ針編みを始めたんだ。時間がたくさんあったから手を動かしたくなって。それに、これまで当たり前だったものの大切さにも気付かされたな、友情とかね。やるはずだったツアーができなくなってしまって、ツアーも当たり前にできるものではないんだなと痛感もした。

メリーナ:私はロックダウンになって、音楽作りを完全にやめてしまった時期があったよ。ただ、それを悪いことだとも思っていなくて、むしろ必要な時間だったと思ってる。日本でのライブのあと、ジェイ・ソムが予定していた他のライブは全部中止になってしまい、ものすごく忙しくなるはずだった2020年が一気に暇になってしまって。

でも今回に限らず、なにか悲しいことが起きた時って、その中にはなにかポジティブな要素があるものなんだよね。ジェイ・ソムの予定が全部なくなったことで、バチェラーにエネルギーを注ぐことができて『Doomin’ Sun』という作品ができたこともそう。そのことに意識を向けて、悲しいことに向き合い続けなくてよくなったしね。

エレン:私もロックダウンのおかげで、時間が手に入ったのはよかったと思う。アルバム制作の時、普段は予定の時間に間に合わせるために、急いだりしないといけない瞬間があるものだけど、今回は理想の音になるまでたっぷり時間をかけられた。オンラインで他のミュージシャンとつながることもできるから、コラボレーションもたくさんできたしね。

─2人がバチェラーを始めたのは、2017年にカリフォルニア州のサクラメントで対バンをしたのがきっかけだったと聞きました。その時はお互いどんな印象だったんですか?

エレン:私はもう一目惚れって感じ、友だちバージョンのね。好きなものもすごく似ていて、出会ってすぐに仲の良い友だちになっている未来が見えたな。あの日以来ずっと連絡を取り合って、自然な流れで今回のアルバムが実現した。以前からジェイ・ソムのファンだったから余計に嬉しかったよ。

メリーナ:仲良くなりたいと思っている人のことって、事前にネットストーキングしたくなるんだけど(笑)、エレンの場合もそうで、知り合ってすぐに彼女のYouTubeを全部見たんだよね。

エレン:(笑)

メリーナ:そしたら私が知っている人の中で、誰よりもギターがうまくて感動した。とにかく、私たちは特別な友情でつながっているし、このアルバムはお互いの音楽への愛があってこそ生まれたと思う。




─音楽を一緒に作るにあたって、友情はやはり大切なもの?

エレン:そう思う。もちろん、友情とか絆がない状態で音楽を作っているバンドはいるし、それで問題なければいいけど、やっぱり友情でつながっていた方がよりエキサイティングなものが作れると私は思ってるかな。友情が生み出すパッションとか刺激とかって、間に合わせで作れるようなものじゃないからね。このアルバムではそれが不可欠だったんだ。

メリーナ:私もそう思う。友情は、本当に本当に大切。今作のレコーディングのためにトパンガに家を借りて2週間滞在したのだけど、2週間って制作時間としては結構短くて。しかも「Sun Angel」以外、事前に全く何もできていない状態だったんだよね。そういう状態で何かをやる時には、相手に対する信頼がないと成し遂げられない。でもエレンとはしっくりくることが多くて、いろんなことを口に出さなくてもスムーズに進めることができたのは嬉しかったな。

─トパンガではどんな1日を過ごしていたんですか?

メリーナ:とにかくゆるくて(笑)、2週間という期間をプレッシャーに感じず自分たちのペースを大事にしながら作業できたよ。まず朝のスタートはゆっくりめで、朝ごはんを一緒に作ってからジャムセッションをしたり、音楽を聴いたりしつつゆっくり作業を始めて。日によっては、別々に作業をしたりもした。私がコンピューターに向かって、エレンは外にあったツリーハウスで歌詞を書くっていうことが多かったかな。

エレン:森の中からはコヨーテの声が聞こえたりして感動的だった。しかもすごく素敵な家だったよね。広くてスペースがたくさんあったし。リビングにはドラムとギターとピアノが置いてあったので、ダイニングにメリーナのレコーディング機材をセッティングしたんだ。

Translated by Aoi Nameraishi

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