オリヴィア・ロドリゴの音楽的魅力 伝統と革新が共存するソングライターとしての凄み

オリヴィア・ロドリゴ(Photo by Stefan Kohli)

オリヴィア・ロドリゴの快進撃が止まらない。先ごろリリースしたデビューアルバム『SOUR』は全米アルバムチャート初登場1位を達成。さらに、今夜7月1日より放送スタートするドラマ「イタイケに恋して」(読売テレビ/日本テレビ系、毎週木曜 23:59~)では、デビュー曲「drivers license」が主題歌に起用されている。そんな彼女の音楽的魅力を、ローリングストーン誌ライターのロブ・シェフィールドが考察。ポップの過去と未来を行き来するソングライターとしての資質に迫った。

オリヴィア・ロドリゴのことを、音楽業界のラボで生み出された人工のティーンポップスターだと思い込んでいる人もいるだろう。しかし実際の彼女は素晴らしく未熟で、どこまでも人間臭い。まさに新時代のポップスターである彼女は、過去の慣習に従うのではなく、新たに自らプレイブックを書き上げようとしている。デビューシングルにしてNo.1ヒットとなった「drivers license」がシーンを席巻するまで、彼女のことをまるで知らなかったという人は多い。同曲は史上最高のデビュー曲のひとつに数えられるが、続くシングル「deja vu」と「good 4 u」がそれに勝るとも劣らない出来だったことに、世間は一層驚いたに違いない。しかも前者は、ビリー・ジョエルが好きで意気投合したという元カレを嘲る内容となっている。一応触れておくと、ビリー・ジョエルが最後にヒット曲を出したのは、オリヴィア・ロドリゴが生まれる10年前のことだ。



彼女が新時代のスターとして位置づけられるのは、テイラー・スウィフトを聴いて育った世代のヒットメイカーたちを代表する存在だからだ。彼女のソングライティングは、テイラーの緻密で複雑な自己言及と、巧みに匿名化されたストーリー構成が基本になっている。それは音楽業界の今後を占うものであり、テイラーがポップ・ミュージックにもたらした変化はあくまで始まりにすぎない。ロードの熱狂的ファンでもあるオリヴィアは、2人の曲作りにおけるトリックを無意識のうちに身につけている。それでもなお、彼女が世界を敵に回すことを恐れない、若く野心に満ちた女性アーティストの系譜にあることは疑いない。2003年にオリヴィアが生まれた週に、アヴリル・ラヴィーンの「I’m With You」がトップ10に入っていたことは、単なる偶然ではないはずだ。アヴリルが歌った“クソ寒い夜”をくぐり抜けて、オリヴィアは彼女からバトンを受け取ったのかもしれない。(ザ・ポスタル・サービスのデビューアルバムが彼女が生まれた週に発表されていることも、彼女がポップの申し子であることを裏付けている)




「drivers license」は、豊かな才能とアイデアの持ち主が生んだ真のクラシックであることを一聴しただけで確信させる稀有な曲だ。彼女の楽曲は聴き込むほどにその緻密なディティールが浮き彫りになっていき、筆者は「deja vu」におけるミックスに“アイ・ラヴ・ユー”という囁きが忍んでいることに気づくまでに何週間も要した。前置き無しに突如発表された新曲「good 4 u」では、ギターサウンドとバレットという90年代を象徴する要素を確信犯的に組み合わせ、スナック菓子と一緒に購入したガソリンで思い出に火を灯すというミュージックビデオは彼女のヴィジョンを一層明確に打ち出した。

Translated by Masaaki Yoshida

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