細美武士とTOSHI-LOWが語る、the LOW-ATUSが体現するフォークの世界

「フォークのいいところって表現を丸めないでいいこと」(細美)

―10曲目の「ロウエイタスのテーマ」で震えたのが“さあ考えよう”というフレーズです。ロウエイのテーマだから“怒れ!”とか“FUCK!”みたいなフレーズが出てくるのかなと思いきや“さあ考えよう”と。詞を書いたのはTOSHI-LOWさんですよね。

TOSHI-LOW:だってそうじゃない? 生きていくって。まずは考えることでしょう。俺たちだって社会問題も考えてるわけじゃん。社会の中で生きてるわけだから、ある意味社会派であるし。だからそれをやめない限りは、みんながここで起きていることの当事者だし。そもそも民主主義って全員が参加することによって成り立ってるものなんだから、堅苦しい政治の理論なんて好きじゃないけど、面白くおかしく酔っ払いながら、あーでもねぇ、こーでもねぇ言ってていいんだよって思うし。例えば右と左だって簡単にはわかれないわけじゃん。一つ一つ、全部に右と左があるんだし、そもそも真ん中ってどこよ?って話でさ。今考えたら、フランス革命の右と左って真逆になってるわけだし。だから、そんなことも、こんなことも、笑うことも、すべて一緒だよっていう目線でこの曲は作った。ビール飲んで酔っ払える世の中も政治だし、社会だし。で、真面目に議論するのも自分たちの中にあることだし。だけど、俺は全部が面白くないと嫌なんだよ。だからたまに、真面目なトークイベントにも呼ばれるけど、いかに崩してやろうかとしか考えてないもん。

―細美さんはどうですか? 「ロウエイタスのテーマ」となると、細美さんも共犯者ですから。

細美:もちろん。フォークのいいところって表現を丸めないでいいことなんだよね。“原発”とか“戦争”とかってバシっと書いてあってさ。フォークの世界ではそれが普通のフォーマットだし、ロウエイがオリジナルをやるなら、こういう曲が絶対に入ってくるだろうと思ってたから、最初に聴いた時は“おー、来た来た来た!”と思ったよ。ただアンチテーゼだけブチまけて終わっても良かったんだろうけど、最後に結局取りこぼさないようにしてるじゃない。誰かをはじいて終わりじゃなくて、“まぁ、こっち来いよ”みたいな。そういうのがTOSHI-LOWらしいなと思ったし、ロウエイらしいと思ったね。最初に冷や水ぶっかけとくんだけど、その先のためにやってるような感じがあるから、いいなと俺は思った。

―アルバムには、細美さん作詞の曲も、TOSHI-LOWさんが作詞の曲もあり……。当たり前ですけど、二人の書く詞が全然違いますよね。

細美:うん、そうだね。あと俺はこんなにたくさん日本語で歌詞を書いたのって初めてだから。

―日本語詞を書いて何か発見はありました?

細美:最初から日本語で作ってりゃ日本語で書けるんだなって感じだったね。いつも英語で曲を作って、日本語の曲のほうがみんな覚えやすいし歌いやすいから、何曲かは日本語にしようって感じだったんだけど、最初から日本語で書くと全然苦でもなんでもないんだなって(笑)。割と自分で書いた歌詞を気に入ってるよ。一音節に一文字しか乗らないから、どうしても英語よりも言える内容が減るんだけど、減った分すごく隙間がある詞になるよね。俺、自分で気に入ってるんだけど、『空蝉』の最後のブロックの〝雨宿り〟って単語を使わずに、雨宿りしてる感じが書けたのはよかったなって思ったね。

―非常にポエジーかつ叙景的ですよね。

細美:でも、わからない人もいるんだろうなって思った。“トタンの屋根 借りたままで”で“雨宿りだ”って気づかない人もいるんじゃないのかなって。

TOSHI-LOW:ホームレスかなと思うヤツもいるよね(笑)。

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