細美武士とTOSHI-LOWが語る、the LOW-ATUSが体現するフォークの世界

the LOW-ATUS:左から細美武士(the HIATUS、MONOEYES、ELLEGARDEN)、TOSHI-LOW(BRAHMAN、OAU)



二人でレーベルを立ち上げた理由

―(笑)。TOSHI-LOWさん作詞の「思草」は震災の景色が描かれていますね。

TOSHI-LOW:もちろんそれもそうだけど、昔と今をタバコの煙の向こうで見比べているっていう歌なんだけどね。

―ええ。お二人は震災から10年をどんな風に感じていますか?

細美:震災から10年っていうことに関して、上手くまとめられる気がしないから、そういう風には喋らないけど。でも気づいたのが、“あれから10年”ってものがはっきりわかったタームって今まで俺にはあんまりなかったんだよね。例えば、「中学卒業から10年か」って言われてもその10年間がどれぐらいの厚みだったかってパッと思い計れなかったり、20歳から30歳までの10年の距離感というか、タイム感ってあんまりはっきりしないんだけど、震災から10年っていうのだけははっきりとわかる。“そうか、10年ってこれぐらいの時間か”って、初めて俺は感じとれるようになったのね。そうすると、あと自分の人生で何回その10年があるのかがわりとイメージできるようになって。この10年という物差しが手に入ったことで、“俺の持っている人生の時間ってあとこれくらいなんだ”って推測できるようになった。それは自分の人生にとってとても大きなことなんだよね。

―なるほど。

細美:それで、“残りの時間をどう使おう?”っていうのを、じゃあ20年なのか、25年なのかって考えた時に、それを漠然とした感覚じゃなくて、“これぐらいの時間か”ってはっきり捉えられるようになったことは、俺にとってデカかった。

―細美さんはここから10年間はどうしようと考えているんですか?

細美:ジョーになんか教えるわけないだろ(笑)。っていうか誰にも教えないけど。基本的に昔から今日を無駄に生きたくないっていう感覚はすごくあったけど、その思いが強くなったよね。YouTube観てる時間なんかねぇなとか。……それでも観てるけどね(笑)。

TOSHI-LOW:すごく特殊なジャンルだけ観てるらしいよ。

細美:スパーリング動画を観て、“こいつ上手いな”とか、“これ、今度やってみよう”とかね(笑)。けど、無駄に生きたくないな、そんな暇はもうないんだなってことが、前よりすごくはっきりしてるから、眠くて終日ダラダラみたいなことはあんまりないね。

―今日という一日を無駄にしたら、未来を無駄にしちゃう、と?

細美:うん。でも、未来にそれができるかどうかも、実は後付けでいいんだと思う。途中で終わるかもしれないし。

TOSHI-LOW:今、聞いてて“あ、そうか”って思ったよ。誰の命令だかわからないけど、俺たちが生まれてきてさ、自分で生きてるつもりだったけど、実は流れで生きさせられてるみたいな感じだったわけじゃん。そこに震災があって、自分たちの歩幅で、自分で歩くことをもう一回能動的にやりだしたわけじゃない? で、その歩幅で10年歩いたから10年の長さがわかったんだろうなって思った。子どもの頃は親に面倒見てもらってるし、若い時は勢いでいっちゃうじゃん。それだと時間感って絶対にわからないもんでさ。だから、タイミングも良かったのかなって思う。震災のタイミングを良いとか悪いとか言っちゃいけないけど。40歳の手前で、流れで生きてたのが一回止まりかけたところで震災がきて、そこから自力で歩くしかなくて、瓦礫の街を自分の足で歩いたからこそ、自分なりの歩幅がわかったんだろうなって思ったよ。

―今回のアルバムリリースにあたってお二人でレーベルを立ち上げていますが、その理由は?

TOSHI-LOW:そもそもお互い会社が違うから、それで揉めたり、真ん中みたいなところをいくよりは、新しく作ってみればそれも一つのトライじゃん。音楽を作るのと一緒で、新しい面白さなんじゃない?

細美:レコードメーカーの存在が、昔より明確じゃなくなってきたでしょ? 歌い手さんが何万回再生とかするような世の中で、レコードメーカーの在り方がどんどん変化していくタイミングだとも思うから。レーベルをやってみて、学びの場として最高だったね。

―レーベルを立ち上げた以上は、このレーベルで今後実験的なことをやっていくんですか?

細美:わからないけど、何をするにしても受け皿があるってことは良いことだよね。“それだったらここでやればいんじゃない?”みたいな、チャンネルが一つ増えたわけだから。

TOSHI-LOW:ゆずやコブクロが移籍したいって言ったら、やってやってもいいけど。

―ユニット専門ですか?

TOSHI-LOW:男性ユニットの専門レーベルとして。

細美:じゃあ武藤ウエノ(武藤昭平 with ウエノコウジ)も出す?

TOSHI-LOW:やだなぁ。売れねーな、あれは(笑)。

―(笑)コブクロさんは今、大変だから来るんじゃないんですか?

TOSHI-LOW:そうだね。だからさっき篩(ふるい)にかけるって言ったんだよ。もともと“そんなことやっても当然の人だな”って篩にかけときゃいいんだからさ(笑)。俺スケベだよーって。

―(笑)最後にアルバムジャケットの写真について教えてください。

細美:これはデザイナーさんが提案してくれた林忠彦さんっていう写真家の写真なんだよ。戦後日本を代表する写真家で太宰治とか文壇の写真を撮ってた人だけど、戦後の闇市の子どもたちの写真もたくさん撮っていて。アナログジャケットの方の写真は、子どもがタバコを吸ってるんだけど、配信の場合、ジャケットにタバコが写ってるの自体ダメなんだって。戦災孤児のこの二人は兄弟分で、タバコを吸ってる方が兄貴分なんだって。で、腹を空かした弟分に「オメエよ、ちょっと飯買ってきてやるからよ」みたいなことを言ってた瞬間を切り取ってる写真なんだよね。


『旅鳥小唄』アナログ盤ジャケット

―TOSHI-LOWさんがタバコを吸ってる兄貴の方?

細美:そういう感じでもないんだよね。二人っていうイメージはもともとあったのかもしれないけど。そういえば、レコード盤の方のジャケット見た人から、「こんな小さな子供がタバコを吸っている写真をみて、ちょっと悲しい気持ちになりました」っていう意見があった。俺たち全くそんなこと思わないで、いい写真だなって思ってたからさ。時代で捉え方が変わるんだなって思って。

TOSHI-LOW:“そもそもこれはオメーの国だよ”って思う。こういう時代があって今が成り立ったんだよっていう話でさ。

細美:しかも世界には、こういう現実がいっぱいあるわけじゃん。

―今の話も踏まえて、レコードの方を買わせていただきます。

細美:レコードは生産枚数少ないから、ジョーは買わないで。

―なんでですか!? お金払えばいいじゃないですか!

TOSHI-LOW:ダメだよ。そこも篩にかけたいから(笑)。

<INFORMATION>


『旅鳥小唄』
the LOW-ATUS
IMPLODE
発売中

1. 通り雨
2. サボテン
3. 空蝉
4. 思草
5. ダンシングクイーン
6. みかん
7. オーオーオー
8. 丸氷
9. 君の声
10. ロウエイタスのテーマ
11. いつも通り

「旅鳥小唄ツアー2021」

2021年6月21日(月)
北海道・札幌Zepp Sapporo
OPEN 17:30 / START 18:30
2021年7月2日(金)
東京・新木場USEN STUDIO COAST
OPEN 17:30 / START 18:30
2021年7月19日(月)
福岡Zepp Fukuoka
OPEN 17:30 / START 18:30
https://thelowatus.com

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE