SIRUPと手島将彦が語る、当事者ではないからこそ知っておくべきメンタルヘルス

ー最近は深田恭子さんやLittle Glee Monsterの芹奈さん、大坂なおみさんなど、ご自身が抱えている問題や病気を公言されることも増えてきました。SIRUPさんの周りでは、こういった自身の問題を公にすることへの見方や捉え方が変わってきた感覚はありますか?

SIRUP:多少は変わってきていると思うんですけど、まだ公にすることがセンセーショナルな状態ではありますよね。僕の友達でもパニック障害を公表した人がいるんですけど、勇気が必要だった言っていて。日本はまだまだそういう問題を気軽に言える環境ではないと思いますね。言ったとしても、「治るといいね」くらいのリアクションをされることが多い。でも、一生向き合っていくような生来の性質でもあったりして、一瞬で治るわけではない場合もあるし。まだまだ気軽に言えるレベルまで、当事者や環境含めて到達していないのかなと思いますね。

手島:SIRUPさんの曲「Overnight」の歌詞なんですけど、"Love & educate yourself"って本当にいい言葉ですよね。ほとんどのことって自分は当事者じゃないから知ることが必要だと思うんですよ。知らないと想像できないし。メンタルに限らず、差別や貧困や家庭環境など自分とは違う状況で生きている人もいっぱいいる。何かあったときのために必要な想像力を生むためには知ることが大事で、知るためにはEducateが大事ですよね。特に日本社会だとそういう点について知ることを遠ざけてきた歴史があると思うので、知識を共有できるだけで変わるのかなと思います。



SIURP:海外だとLove and educateを掲げているアーティストは多いですよね。僕はメンタル面に関する知識とメンタルヘルスに配慮した環境が整えば、悩む人は減っていくのかなと思うし、自分も学ぶことで楽になることが多いんです。今なんてちょっとエゴサーチすれば、どれだけ逃げても自分のことなんて簡単に見られてしまう。自分のことを的外れに批判しているのを見にいってしまうのって、実はちょっとした成功体験らしいんですよね。いつも的外れなことを言っている相手がまた的外れなことを言っているのを確認してしまうと、自分は合ってるっていうルーティンにハマってしまう。けど、心はどんどん傷ついてしまっている。そういう構造も知ることで、自分の精神状況についてより想像しやすくなるし、理解できるようになる。僕は、できれば他者を攻撃している人たちのメンタルヘルスも良くなればいいなと思っていて。メンタルヘルスについて発信することで、自分のことも業界のことも、そういうファンの人のことも救えるようになると思ってます。

手島:特に広くエンタメ産業だと、ファンとの関わりはマネジメント側も含めてテーマのひとつとして取り組んでいることだと思うんです。解決策の一つとして、ミュージシャン側とファンがお互い学ぶことも大事。K-POPの事例を見ていると、彼らがうまくいった理由のひとつは強力なファンのバックアップもあったからですが、その強力な繋がりを維持するために発信し続けると結果アーティストにも負担が増える。その同時進行として、メンタルって大事だよねという価値観がファンと共有できていると、無駄な誹謗中傷とか無闇な攻撃性が自然淘汰されていったという事例もあるんです。そのようにメンタルは大事なんだよという価値観を共有してお互いに良い関係を作っていくのが大事なのかなと思いますね。その為には、ファンとミュージシャンと業界の三者がメンタルヘルスの大切さに関するメッセージを発信していくことが重要だと思います。

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