元乃木坂46・中元日芽香と手島将彦が語る、メンタルヘルスを含めたアイドル論

ー中元さんも手島さんも表舞台に立ったことがある人なので、特にエンタメや音楽業界の人がつらい時に相談できる数少ない場所になれそうですよね。

中元:アーティストさんって人一倍プライバシーがあって、「この人に心を許して話して大丈夫なのかな」という警戒心を強く持っていると思うし、そういった中で完全に理解するのは難しいけれど、「私も一応、元表に立つ人でしたよ」ということで、ちょっと話してみていいかもって思っていただけると嬉しいです。例えば、しんどいなってなった時に仕事をセーブすると世の中になんとなくバレてしまうとか、芸能特有の事情だと思うので。長い目で見たら、休憩も必要だよということを同じ立場としてお伝えできたらいいなと。

手島:中元さんのような立場の方が発信することで、例えば、著書をきっかけにメンタルのことって大事なんだよなと思うファンが増えて、結果的にいい相乗効果になってくれるといいなと思います。

中元:それを言っていただいて、やっと納得しました。元々のファンの方にもカウンセラーとして見てほしい気持ちが強かったんです。それだけではなくて、アーティストも人間なんだよなと思ってくれたらうれしいです。本を書く上でテーマが適応障害、休業やメンタルヘルスみたいなワードだけ並べたら重たくなっちゃうなと思ったんです。読んだ感想が「しんどい」とか、「疲れた」ってなってしまうのではなく、フランクに読んでいただけたり、「なるほどね」ってなればいいなと。

手島:この本に書かれていることは新しいアイドル論の話にも繋がる気がするんです。例えば、本ではアイドルは歌やダンスだけではなくて、「いかに目の前のことに真摯に取り組むかが求められている職業」であり、それが自分のアイドル論だと仰っていましたが、そこにメンタルヘルスをはじめとして、他にもいろいろなことを含めて「真摯に取り組む」ことがアイドルという存在であり生き方なのだということを提示されていて、それによってファンも含めて、新しいアイドル論が出てきてもおかしくない気がします。悩みがあったり、メンタルにつらさを抱えていても、その人の魅力がなくなるわけじゃないし、同時にそうした辛さを社会と皆で一緒に解消していこうという、すべての人に通じる宣言だと思うんです。それを新しいアイドル像のひとつとしてファンの方にも理解していただけたらいいなと思いますね。



<書籍情報>



発売日:2021年6月22日(火)
定価:1430円(税込)

<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

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