甲斐バンド、デジタルとアナログの狭間でもがく80年代初頭を振り返る

ビューティフル・エネルギー [Live] / 甲斐バンド

1980年3月発売、1980年代最初のシングル。作曲とボーカルが甲斐さんではなくて、ドラムの松藤英男さんで、カネボウ化粧品のCMソングにも使われました。1980年8月の箱根・芦ノ湖畔で行われた野外ライブバージョンです。1979年に『HERO(ヒーローになる時、それは今)』がCMソングでミリオンセラーになって、その次のCMソングですから、やっぱり周りはどこかその第二弾を期待するわけですが、そこに全く違うアプローチで、ドラムの松藤さんをクローズアップした。これは当時のバンドの一つの戦い方でしょうね。つまり、バンドの勢いを使って、外部の力とどう拮抗していくか。相手に流されずにそれを自分たちのものにしていく戦略的な意図が見えますね。しかも、1979年にはベースの長岡さんが辞めて3人になったわけで、バンドの再出発の旗も掲げなければいけなかった。その中で、俺たちはこういうバンドなんだと見せた1曲でした。

1980年代の始まりの曲ということでもう1曲紹介しなければならないのが、1980年7月に出た「漂泊者(アウトロー)」です。これはテレビドラマ『土曜ナナハン学園危機一髪』の主題歌です。1980年代初頭の世相、"荒れる学校"というのが問題になってました。警察白書が当時の校内暴力発生件数を記録していますが、1980年、1981年は中学校で校内暴力が起こった件数が一番多い。そういう背景を舞台にドラマ『金八先生』が大ヒットするわけですが、この『土曜ナナハン学園危機一髪』はよりドキュメンタリーチックなドラマでした。第一話が「ガラスの動物園」というタイトルで、全曲が甲斐バンドだった。テレビドラマの中で、全曲が主題歌を歌ったバンドやミュージシャンの曲というのもあまりそれまでは例がなかった記憶がありますね。しかも、1970年代に全くテレビに出なかったロックバンドをそういう風にフィーチャーしたという意味でも画期的なドラマでした。その主題歌「漂泊者(アウトロー)」は、今日の最後にライブバージョンでお届けしようと思います。この「漂泊者(アウトロー)」の入ったアルバムのタイトル曲を次に紹介します。1980年10月発売の「地下室のメロディー」。

Rolling Stone Japan 編集部

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