つまらんものほどクリティカル。太平洋をまたいでお取り寄せしたニッポンのプロダクツ

海を渡ってやってきた人たち。中山式健康器はコロナでマッサージ店が閉鎖されている間、いつにも増して大活躍してくれました。2球式も愛用してます。(Photo by Gen Karaki)

脱サラ中年ミュージシャンのニューヨーク通信。コロナかデモの話題かな、と予想した編集者のもとに届けられたのは、謎のぼやけた写真とあまりにミクロな身辺雑記でした。これがリアルな生活感……。

※この記事は2020年発売の『Rolling Stone JAPAN vol.11』内、「フロム・ジェントラル・パーク」に掲載されたものです。

すべての仕事がなくなって早4カ月が経ち、もはやプロフィール欄には無職と書いたほうがいいなーと思い始めています。ブロードウェイが2021年の正月公演まで中止にすると発表したことが呼び水となったのか、同様の発表をするコンサートホールが相次ぎ、別の地域に出自があるミュージシャンの多くはNYを離れていきました。

大きなうねりとなったブラック・ライヴズ・マターのこと、コロナ行動制限下でミュージシャンがサバイブしていくこと、また連日どこかしらで行われるようになってきたアンダーグラウンドなパーティのこと、あと顕在化に歯止めがかからないアジア系差別のこと、いろいろなトピックはありますがどれも他の人が書くと思うので、今回は極私的というか取るに足らない話を書こうかと思います。

発端は、3カ月前に引っ越した旧宅の管理会社から電話があって、出ると、お前宛ての荷物が届いている、ほんとなら送り返してるところだけど預かってやってるから引き取りに来い、というちょっと不機嫌な感じの連絡でした。住所変更は漏れなく済ませたはずだし、DM程度なら捨ててしまうだろうし、何だろう。と思いながら旧宅に赴くと、渡されたのは日本からのEMS(国際スピード郵便)で、包みのシルエットを見た瞬間「ごん、お前だったのか」みたいな気持ちになったんですけど、4月にヤフオクで落札したceroのレコードでした。

すっかり時空の裂け目に飲み込まれたものと思って強制忘却していたんですが、よくたどり着いたねお前。航空各社の日本=北米便は3月半ばから大幅な減便が行われて、レコードを落札したときにはすでに、積み切れない国際郵便が空港にスタックしていて遅延やむなし、という噂が流れてはいました。その後4月24日にEMSの受付が完全に停止されて、いまもそれは続いています。

とはいえここはニューヨーク。シベリアや中央アフリカじゃあるまいし、わざわざ日本からEMSで送ってもらなきゃ困るものなんて、基本そうそうありません。日系のスーパーに行けば最新の季節限定トッポだって売ってます。値段は倍するけど。それにせっかくアメリカで暮らすんだから、なるべく現地のもので現地なりに暮らそう、という方針のもとやってきました。きましたが!

あるっちゃあるんです、どうしても入手できないサムシングというのが。そしてなんだか少し負けた気分になりながら、太平洋を跨ぐ購入ボタンをポチってしまうわけです。送料のほうが高え、とか言いながら。

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