トーキング・ヘッズのティナ・ウェイマスが名人たる所以、鳥居真道が徹底考察

つい先日、自分で宅録した素材をミックスして気がついたことがあります。それはすべての楽器を自分好みの音にして重ねると音域がかぶってモコモコしたミックスになってしまうということです。耳が痛くなるようなキンキンした高音があまり好きではなく、歯ごたえがあって中身がぎっしり詰まった感じの音が好きです。そうした音が重なると帯域がかぶって、却って伸び切ったカップラーメンのような音になってしまいます。やはりトータリティを考えて音作りしなくてはならないのだなと学び直した次第です。

ミックスに限らず、演奏も同様のことが言えるでしょう。人は各楽器を切り分けて聴くわけではありません。アンサンブルの中でどう機能しているのかを常に意識しながら演奏する必要があります。ティナ・ウェイマスは初期からそういう意識をもって演奏に取り組んでいたのでしょう。それこそがいきなり名人のいきなり名人たる所以でしょう。


鳥居真道



1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。
Twitter : 
@mushitoka / @TRIPLE_FIRE

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