甲斐バンドの歴史と闘争、1983年から1986年までを振り返る

今週はPart4、最終週です。解散の時にテレビで放送したドキュメンタリーのタイトルが「甲斐バンド十二年戦争」。その十二年戦争の最終決戦の章です。1983年から1986年までを辿ってみようと思います。「ポップコーンをほおばって」は1週目にもお届けしました。実質的なデビューアルバム『英雄と悪漢』の1曲目でした。1週目は、この後もこの曲をお聞きいただくことになります、とお話しながら今週になってしまいましたが、お分かりのようにアレンジもサウンドもかなり違います。このアフリカンパーカッションのようなビートが、オリジナルには全くありませんでしたからね。こんな風にバンドが変わってきた象徴のような曲です。1980年代に入ってから、特に『破れたハートを売り物に』からこういうサウンドに踏み入れて、ここまでたどり着いた。そんな一曲です。

先週は1982年のアルバム『虜-TORIKO-』で、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったエンジニア、ボブ・クリアマウンテンとタッグを組んだところまでお話しました。甲斐バンドはデジタルの普及で激変していたレコーディング環境といち早く向き合ったロックバンドだった。1982年の年末の武道館二日間で、「いいものを作る時間をくれ」という名台詞を残して、翌年のコンサートスケジュールを全部白紙にして作ったのが、1983年7月に発売されたアルバム『GOLD/黄金』だったんです。その中の曲をお聞きください。

シーズン / 甲斐バンド

この曲を初めて聴いたときは、こんなに音がキラキラしているんだというものでした。ドラムの太さやエコーは1980年代の音ですが、キラキラした音はそれまでの甲斐バンドにはなかったなと思いました。音の聞こえ方が変わってきた。当時のロックバンドのレコーディングの順番、ドラムとベースのリズム隊を録ってからギターを録るという流れと違うものがここから始まってるんです。デジタル・レコーディング。海を舞台にした贖罪と再生のストーリーは、先週の『虜-TORIKO-』の中の「BLUE LETTER」とも共通しているんですが、この「シーズン」は暗い海に向かっていくというよりは、海の向こうに希望が見えるような音の作り方にもなっている気がしました。これは改めて思うことですけど、当時彼らバンドが見ていた光がここにあったんでしょうね。ニューヨーク三部作のアルバムからは、アレンジャーが加わっているんです。後藤次利さん、椎名和夫さん、井上鑑さん、瀬尾一三さん、星勝さんなど、音の甲斐バンドがここから始まっています。この「シーズン」のキラキラしたアレンジは、井上鑑さんがいなかったらできなかったと思います。1983年7月発売10枚目のアルバム、ニューヨーク三部作の二作目『GOLD/黄金』の中の曲でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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