Blue Lab Beats × Kan Sano対談 英日トラックメイカーが音楽観を深く語る

プロダクションと生演奏の融合について

―Kan SanoさんもBLBもビートメイカーであり、生演奏もやっている。その二つが融合しているのが特徴だと思います。その部分について話を聞かせてください。

NK-OK:僕らの場合は、僕がスタジオの中でサンプリングしてドラムビートを作って、その意図をまずデヴィッド(Mr DM)に伝える。

Mr DM:僕は彼が作ったビートに影響を受けた演奏をキーボードでやってみる。その後は同じことをベースでやる。コード、メロディ、ベースみたいな順番で作ることが多いね。最初にドラムのビートがあって、それを後から追っかけていくような感じで、アレンジを作っている。

Kan:二人は生楽器をどのくらい演奏するんですか?

Mr DM:僕はベースとギター、キーボードがメインだね。

NK-OK:デヴィッドはライブだとヴィブラフォンも演奏するんだよ。



Kan:僕がBLBをすごいなって思うのは、生楽器を弾いていてインプロをやっていて、結構たくさん演奏していてもダサくならないんですよね。テクニカルな演奏をどんどん入れていくとフュージョンっぽくなって、それだとかっこよくないなってずっと思ってて。でも生演奏は入れたいので、僕としてはそこが苦戦しているところなんですよね。カイディ・テイタムみたいな少し前の世代だと、インプロはできるんだけど、あまり弾かないように抑えてやってるんですよ。僕はそういうやり方から影響を受けたんですけど、BLBとか「We Will Rise」にゲストで参加しているブラクストン・クックを聴いていると、アドリブも入れているのにそれがかっこいいんですよね。

Mr DM:僕らはハービーやコルトレーン、マイルスのアレンジから影響を受けてきた。彼らの楽曲はフォルムの部分がしっかりしていて、強力なメロディがある。それがあればソロはどこへでも行ける気がするんだ。だから、僕らも作曲をする場合は音楽を支えてくれる曲のフォルムをしっかりさせるようにしてる。

NK-OK:僕はもともとドラムをやっていたから、ドラムをプログラムするときはドラマー的な発想で考えているところがある。ブラクストン・クックにしても演奏者のソロがテクニカルになることがあるんだけど、その場合はドラミングで応えるようにプログラミングすることで対応している。リズムが最適なテンプレートになるようにすれば、その上に乗るものは自由になれると思うんだよね。



―Kan Sanoさんは「意識的に弾かないようにしている」って話を以前からしてますよね。

Kan:ずっとそうしてきたんですけど、最近はインプロの度合いを少しずつ増やすように意識してます。サンダーキャットが出て来たくらいから状況が変わった感じがあるんですよね。フュージョン的なテクニカルな感じがかっこいいって価値観に変わってきたというか。僕はライブだとバリバリ弾くんですけど、音源ではそんなに弾いてこなかった。でも、それをちょっとずつ変えているところです。

NK-OK:それは自分たちも同じだね。レコードにする時にはフォームみたいなものが大切だから、リスナーにとって共感できるようなものにする。でも、ライブだともっと実験的なチャレンジもできるし、そうすることがいいかなって思ってるよ。音楽にはルールブックはないから何でもできる。そういうことを可能にしてくれるのがライブって場なのかなとも思う。ブラクストン・クックが演奏している「We Will Rise」だったら、ライブではもっとマッドなプレイをサックスでやることも可能だと思うし、一方で、レコーディングでは戻ってこれる場所を作っておくことも必要だと思うんだよね。曲を聴く人との間に接点を持たせるようにするってことはレコーディングではいつも意識してるから。

Kan:その辺の考え方は僕と同じだなと思うんだけど、BLBはそのバランス感がいいんですよ。こうやって話してて、僕もBLBみたいにもっとインプロを入れたいなと思いましたよ。あと、BLBの音楽を聴いてると、「もともとドラムを叩いていた」というのはわかりますね。

NK-OK:そうだよね。

Kan:その上で生のドラムでは叩けないような、サンプラーだからこそできるグルーヴ感がある。そこがかっこいいんですよね。

NK-OK:嬉しいな。そうだといいなと僕も思って作ってるんだ。

Translated by Kyoko Maruyama

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