Blue Lab Beats × Kan Sano対談 英日トラックメイカーが音楽観を深く語る

新しいアルバムに向けた挑戦

―プロダクションと生演奏の話をこのまま続けたいんですけど、BLBはトラックを作る際には、それなりのボリュームの生演奏を入れることを想定して、そのためのスペースを作るようにしているんですよね?

Mr DM:やっぱりスペースは重要だよね。残された余白のありかたによって何ができるかと何ができないかが決まってしまうからね。スペースは呼吸するための場所って感じでも必要だしね。例えば、強力なものが進んでいるところで二つだけビートが止まると、リスナーはそこで気持ちをリセットすることができる。その先に何があるんだろうって予想外の展開にも繋げることもできる。ずーっとコードだけ弾いてきたのが、あるときパッと消えると、そこでリスナーも「ハッ!」となりリセットできる。そういう使い方もある。

NK-OK:ブラクストンとの曲に関してだと、彼はアメリカで活動しているので、国境を超えて音源のやり取りをしなくてはならなかった。だから、かなりスペースを作って、彼が自由にサックスを演奏できるようにしておいたんだ。その上で少しフィルやグルーヴの変化を入れておくことで、彼の演奏のきっかけになるアイデアも用意したつもりだよ。

Kan:その「We Will Rise」って、ブラクストン・クックがサックスを入れた後にドラムをプログラミングし直したりしてます?

NK-OK:普段はソロを弾いてもらった後には自分で音を加えることが多いんだけど、あの曲に関しては不思議と最初の時点で自分の中にアイデアがあったし、最初の時点でエネルギーがあるものができたんだ。だから、今回は一箇所だけ変えたくらいで、ほぼそのままだね。それはすごく珍しい例で、この曲には勢いやモメンタムみたいなものがあったんだ。この曲でこのやり方がうまくいったこともあって、それ以降は自分がやりたいものをディテールに至るまで、最初にかなり入れてから送るようになったんだよね。

Kan:フィルとか、ビートの変化をソロを入れてもらう前の段階で、最初からやっちゃってるってことか。

NK-OK:そうだね。トラックを送った時点でフィルとかを入れていたから。ブラクストンはそこにワンテイクであの演奏を入れてくれたよ。

Kan:ちなみにBLBの二人はレコーディングでは同時に演奏したりもするんですか?

NK-OK:現在制作中のアルバムでは、ワンテイクで一緒に演奏している。でも、『We Will Rise 』までは僕が2小節か4小節のドラムループを作って、そこにデヴィッドが演奏を乗せる作り方だったね。これに関してはガーナに行ったからとか、なにかきっかけがあったわけではないかな(笑)。少し前から僕らが好きなコルトレーンのような人たちが、アメイジングな形でやってるようなワンテイクでのセッションにチャレンジしたいと思うようになったんだよね。

それにさっきKanが言っていたようなフュージョン的なものをもっとマッドな感じで出したいって思うようになったのもある。だから、ドラムマシーンに関してもワンテイクで演奏しているんだ。そのためにかなり練習もしたよ。ドラムマシーンをセッション的にワンテイクでやるっていうのもマッドな試みだと思うんだけど、そういうことも今はやってる。たぶん早くて年末、来年にはみんなに聴かせることができるんじゃないかな。僕らはガーナの体験があまりに大きくて、ガーナに行く前に予定していたものは全部チャラって感じの気分なんだ。もう一回やり直すくらいの感じで、どんどんチャレンジしている。だから早く作って出したい気分だよ。




Blue Lab Beats
『We Will Rise』
発売中
https://www.universal-music.co.jp/p/00602435761237/


Kan Sano
「Natsume」
配信中
https://kansano.lnk.to/Natsume

Translated by Kyoko Maruyama

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