ガービッジのシャーリー・マンソンが語る男性優位社会との闘い、パティ・スミスからの学び

人種間の平等について思うこと

ー以前、「レガシー」という概念は男性的で、自分は信じない、とおっしゃっていましたね。今でも同じ気持ちですか?

シャーリー:ええ。今でも本気でそう信じてる。自分のレガシーや自分がいかに重要かを並べ立てる男性アーティストを大勢知ってる。本人にとってそれが重要なら別に構わないけど、私としては「だから何?」って感じ。この先くたばって死んだら、自分が後世に残したレガシーとやらを知るすべはないもの。私はいまを楽しみたい。今を楽しく生きたいの。いい食事をして、最高のセックスをしたい。自分が死んだ後のことなんて、私にとっては完全に無意味だわ。時間を賢く使いたいの。正直、私が気にしているのはそれだけよ。

ーレガシーが本来男性的だというのはどういうところですか?

シャーリー:素人の分析で申し訳ないんだけど、女性に子宮があって子供が生めることと関係していると思う。それってすごく奥深いことよね。男性に与えられなかった数少ない贈り物のひとつは、自分の体、自分の血、身体の熱や栄養から何かを生み出す能力よ。死後のレガシーについてうだうだ言う女性をほとんど見かけないのは、たぶんそれもあるんじゃない。女性にとって、それは子供を作ることなのよ。


ガービッジ(Photo by Maria Jose Govea)

ーあなたはスコットランド人ですが、最近自分はスコットランド人っぽいなあ、と思うのはどこですか?

シャーリー:度胸があるところ。それがキャリアでもすごく役に立ったわ。スコットランド人の特性だと思う。スコットランドの人たちはタフで、ユーモアのセンスも抜群なの。ユーモアと度胸。道路にまいた砂のように、「ユーモアで鍛えられた」と言うべきかしらね。

ー先ほど「度胸」とおっしゃったとき、古くは「Stupid Girl」や「Only Happy When It Rains」など、あなたの曲には克服や前進を歌ったものが多いような気がしました。どれも不屈の忍耐を歌っていますよね。

シャーリー:(一呼吸おいて)そんなことを言われるなんて不思議、「あら、その通りかもしれない」って感じだもの。確かにそうね、私にとって一番大きなテーマは「どうすれば克服できるか? どうしたら私たちは乗り越えられるか?」 物事はしばらく上手くいく。でも永遠には続かない。どんな人生でも、そういった困難が顔をのぞかせる。障壁を乗り越えて自分が望む人生を送るためには、私たちはみな自分を設定しなおさなくちゃいけないの。だからあなたに言われて、自分のテーマを発見できたのでちょっとびっくりしたわ。本当、感激だわ。私にもテーマがあるじゃない。最高ね。



ー「Waiting for God」は最新アルバムの中でも一番好きな曲です。人種間の平等についての取り上げ方がいいですね。社会全体として、白人層の無関心(white indifference)とどうやって戦っていけばいいでしょう?

シャーリー:それがまさに今、私たちが抱えてる問題よ。「白人層の無関心」って言葉は興味深いわね。私がとくに驚いたことのひとつが、世界各地で白人が躊躇したり無関心を装ってることだから。TVで目にする光景を見ながら、声を上げる道義心がないのよ。私たちがやれる一番大事なことは、まずは絨毯を引きはがして床のごみを見ること。そのあと絨毯の下の掃除に取り掛かるの。

黒人に対する警察の横暴をいくらか減らすことができたら、出だしとしては上出来でしょうね。本当に社会が平等になって、途上国の人々が西洋社会の富の分け前にあずかれるようになるには、まだ何十年もかかると思う。でもやってみなくちゃ。それほど力や富のない国に手を差し伸べるのよ。すべての人たちの状況改善に取り掛かれば、世界もきっとよくなる。そうすれば誰も失うものがなく、みんなが分け前にあずかれるわ。

でも、仮に私が具体的な改善策の答えを知っていたら、音楽業界じゃなくて政治の世界にいたでしょうね。私はただ、自分が何を正しいと思うかわかっているから、自分の発言力を活かして、友達や周りの人々が関心を向けてくれるよう努力してるの。黒人の企業をサポートしたり、黒人の意見や人材を後押ししたりね。

Translated by Akiko Kato

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