池松壮亮が語る、家族観と社会観 「人間は『社会』を諦めたら生きていけないはず」

Rolling Stone Japan vol.15掲載/Coffee & Cigarettes 29| 池松壮亮(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。実力派俳優・池松壮亮の最新主演映画『アジアの天使』。石井裕也監督とともにオール韓国ロケで挑んだ一作。コロナ禍の中、現地のクリエイターやスタッフとの共同作業を通して、池松が感じ取ったこととは? 家族観や社会観についても自論を語ってくれた。

Coffee & Cigarettes 29 | 池松壮亮


「よくタバコはコミュニケーションツールだとか、何か生産的なことに繋がるというようなことを言われてきましたけど、そんなのはほとんどまやかしだと思いますよ」

アメリカンスピリットを燻らせながら、彼は屈託のない笑顔をこちらに向けた。

池松壮亮。10歳の時に子役デビューを果たし、その数年後にはハリウッド映画『ラスト サムライ』でトム・クルーズと共演。以降も話題作に数多く出演し、2018年に主演を務めたドラマ『宮本から君へ』が2019年に映画化されると、その圧倒的な演技力で主要な映画賞の主演男優賞を受賞した。

若手の実力派俳優としてトップランナーを走り続ける彼は、一体どんなオーラを放っているのか。そう身構えて撮影現場で待っていると、普段着のままカメラの前に立ちリラックスした表情でカメラマンのリクエストに応じている。大スター然とした威圧感は微塵もなく、こちらの質問にも言葉を選びながら丁寧に答える池松。やはり、子役時代から大人たちに囲まれ仕事をしてきたことも影響しているのだろう。一瞬にして周りの人たちの心を魅了してしまう不思議な力がある。しかも視点や発想がユニークで、「タバコの魅力」について尋ねた時もこんな答えが返ってきた。

「みんな薄々気づいているはずなんです、タバコもお酒も『ただの嗜好品』だって。ただ好きで嗜んでいるのに、その後ろめたさをごまかすために後付けで綺麗事を足しているだけです(笑)。ある意味、男社会の悪しきロマンティシズムと言っても過言じゃないとさえ思います。別に嗜好品でいいんじゃないんでしょうか。その方が本来あるはずの価値を、改めて見つめ直すことが出来るはずです。少なくとも僕にとっての喫煙時間は、1日のサイクルの中で欠かせないひとときというか。思考をクリアにするためのいい時間になっています」

そんなタバコを、「こちらの気分に関係なく傍にいてくれる、一番の友達」と言って笑う池松。1日に大体1箱のベースで取材や現場の合間、自宅での作業の合間などに吸っている。


Photo = Mitsuru Nishimura 

「こだわりがあるとすれば、紙巻きタバコが圧倒的に好きです。火をつけることに僕は価値を見出しているんですよ。これはただのロマンティシズムで、さっきの話とは思い切り矛盾してしまうんですけど(笑)、タバコって、これだけ規制が多い都会の中で唯一許される『焚き火』なんじゃないかと」

思わず唸ってしまった。タバコの魅力について、このような表現をした人に会ったのは初めてだ。池松の、こうした豊かな感性や想像力は一体どのようにして身についたのだろうか。

Hair and Make-up = Fujiu Jim

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