BTSを中心に書き換えられる、2020年代のポップ地図

2020年代ポップの産業構造はBTSを中心に書き換えられる?

BTSが2020年代のグローバルなポップミュージックの中心になるというのは、音楽的な周到さだけが理由ではない。ポップカルチャーとはアートと産業の複合体。BTSは産業面から見ても重要な転換期の中心にいる。

既に報じられている通り、BTSの所属事務所HYBEはスクーター・ブラウンがCEOを務めるイサカを買収。スクーターと言えば、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデのマネージャーを務め、テイラー・スウィフトの初期6作の出版権を持つ人物。まさに2010年代の北米メインストリームにおける最重要プレイヤーの一人だ。その会社を韓国の芸能事務所が手中に収めたということは、BTSの全米進出がより勢いづくだけではなく、グローバルなポップ産業の地図がBTS中心で大きく書き換えられる可能性も示唆している。

また、「Butter」にはプロデューサーとソングライターとして、BTSのアメリカでの所属レーベル、コロンビアの会長兼CEOロン・ペリーの名前がクレジットされていることでも話題を呼んだ。ペリーはその慧眼で知られる人物であり、自身が設立した音楽出版社ソングスではザ・ウィークエンド、ロード、ディプロなどと契約。『Starboy』でザ・ウィークエンドとダフト・パンクを引き合わせたのもペリーの手腕だと言われている。ソングスを約164億円で売却後は、わずか38歳の若さでコロンビアの会長兼CEOに就任。それからすぐ、レコード契約とA&Rを務めたリル・ナズ・X「Old Town Road」が全米19週1位という史上最長記録を叩き出している。

The Weeknd - Starboy ft. Daft Punk (Official Video)



Lil Nas X - Old Town Road (Official Video) ft. Billy Ray Cyrus



そして、そんな現行のポップシーン最強の目利きが、今もっとも深くコミットしようとしているアーティストの一組がBTSなのだ。実際、BTS初の全編英語詞曲として無数のデモの中から「Dynamite」を選んだのもペリーだという。

BTS (방탄소년단) ’Dynamite’ Official MV



もっとも、レーベルCEOのような裏方がプロデューサーだけでなくソングライターとしてもクレジットされるのは極めて稀。ペリーは「曲のアレンジやミキシングまで関わる」タイプだと発言しているので、今回はソングライティングにも関与したということかもしれない。ただ、スクーターがアリアナとジャスティンの2020年コラボ曲「Stuck With U」に同じくソングライターとしてクレジットされていたことを踏まえると、2020年代における産業構造の変化の中で新しい利益配分の形が模索されているのではないか?と考えても穿った見方ではないだろう。

BTSのことを「K-POPの世界進出」という切り口で語るのは最早ナンセンスだ。2020年代のグローバルなポップミュージックは、あらゆる面でBTSを中心に動こうとしている。

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Edited by The Sign Magazine

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