地下室の人食い殺人鬼、出会い系アプリに潜む恐怖|2021上半期ベスト

ケヴィン・ベーコンさんが地下室で遺体で発見された数日後の2020年1月上旬、マーク・ラタンスキーの自宅を囲む警察の立入禁止テープ(Photo by Ryan Garza/© TNS/ZUMA)

2021年上半期(1月~6月)、Rolling Stone Japanで反響の大きかった記事ベスト3を発表。この記事は「国際部門」第3位。それは一夜限りの関係で終わるはずだった。(初公開日:2021年4月20日)


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2019年12月24日午後5時頃、米ミシガン州フリントから南西に20分の場所にある住宅地、スワーツ・クリークに住む美容師ケヴィン・ベーコンさん(当時25歳)はゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー男性向けマッチングアプリGrindrで出会った男に会いに出かけた。

ベーコンさんの心は暗かった。家庭に問題があったと、彼の長年の友人でルームメイトのミシェル・マイヤーズさんは言う。その日の午後、自宅の向かいにある美容室での仕事を終えた彼は姉と母の髪をセットしていた。ローリングストーン誌が入手したメッセージのやり取りによると、会いたくない人物が夕食を食べに来ると2人から聞き、その間外で気晴らしをするため、Grindrを開いた。

マイヤーズさんや他の友人たち曰く、これは特に珍しい行動ではなかった。一般的な若い男性同様、一夜限りの関係を友人たちによく自慢していた。しかし、悩みからの逃避手段としてもよくセックスを使っていたと友人たちは言う。田舎臭くて刺激のないスワーツ・クリークが嫌いなのもその悩みの一つだった。「ここにあるものはみんなすごく時代遅れで、色々な機会を逃してる気になるんです」とマイヤーズさんは言う。

派手好きで、ハンドバッグを持ち歩き、有名デザイナーが手掛けた服に詳しい、身長6フィート(約183センチ)以上でがっしりとした体格のベーコンさんは郊外地で目立っていた。20代半ばにして既に生え際が後退していた髪を様々な色に染めていた。「みんなケヴィンを知っていました」と彼の近しい友人サラ・ホープ・スペンサーさんは言う。「大きくて、背が高くて、いつも何かすごいことをしていました」

2019年は全体的に苦しい一年だったが、それを変えようと動いていた。友人たちが住み、より規模の大きいゲイ・コミュニティのあるシカゴに引っ越そうと計画していたが、普段からお金の管理で困っていたベーコンさんにとって、決められた支出額を守るのは容易ではなかったため、まだしばらくスワーツ・クリークに留まることになっていた。

そのクリスマスイブにマイヤーズさんとルームシェアしていたアパートに戻ると、今晩の相手を探し始めた。友人の家に集まって酒を飲みながらゲームをする予定だったルームメイトと話しながら画面をスクロールしているうちに近くに住む男を見つけた。彼女によると、ベーコンさんは身支度を済ませると午後5時過ぎに車で出かけたという。家を出る様子をドアベルのカメラが捉えていた。だが、帰って来ることはなかった。

翌日、家族とのクリスマスの朝食に姿を現さないと、父は警察に通報した。3日間の捜索に地元メディアも同行し、フリントや近くの町に住む友人たちも駆けつけ、警察と家族と共に線路や茂み、畑の中を捜した。もし死んでいるとしたら、どこかの野原など、開けたところにいると考えていた。

皆が外を捜索していたその頃、ケヴィンさんは町から20マイル(約32キロ)離れた田舎にある石造りのコテージの地下室で吊り上げられ、喉をかき切られていた。会いに行っていた相手のマーク・ラタンスキーはすぐに容疑を認めた。しかし、ベーコンさんの身に起きたことは彼を心配する人たちが想像するより遥かに恐ろしかった。

Translated by Mika Uchibori

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