ジャック・アントノフが語るブリーチャーズと音楽人生、テイラーも惚れ込むプロデュース論

ジャック・アントノフ(Photo by Erik Tanner for Rolling Stone)

 

ロードやテイラーとの共同作業

ーあなたの私生活上のできごと(アントノフとロードとの噂)を理論的に説明しようとしたパワーポイント資料が、ネット上に出回っています。自分の私生活の詳細を知っているなどと主張する人々に対しては、どう思いますか?

アントノフ:僕の音楽を聴いていない人たちだと思うよ。いわゆるゴシップに飛びつくオーディエンスもいるだろうが、それは僕のファンではない。ネットに出回っている僕に関する理論がなぜくだらないかは、5分で論破できる。でもそれより、すぐに仕事へ戻るよ。

ーバークレイズ・センターでのロードのステージにあなたがゲスト出演した時、ネット上では再び騒ぎ出すライターもいました。

アントノフ:僕らは1曲共演した。エラと僕とはいい友人関係にあるし、クリエイティブな関係を築いている。「あなたはナイスガイでないと書かれた落書きを見ました。コメントはありますか?」とか、「海の底には、共食いする半魚人の住むコロニーがありました。彼ら曰く、あなたはゴミ箱で食べ物をあさっているとのことです。コメントはありますか?」といった感じかな(笑)。

ーその通りですね。音楽の話に戻ると、ロードの『Melodrama』は、あなたが初めて他のアーティストのアルバム全体に関わった作品でした。この経験から何か得るものはあったでしょうか。

アントノフ:他のアーティストのアルバム全部に関わるのは初めての経験だった。いまでは僕の得意とするところだ。最近では、他のアーティストと僕の長所を活かした仕事ができている。テイラーもエラも、こちらを信じて任せてくれるタイプの人間でよかった。なにせ当時の僕には確固とした実績がなかったからね。

『Melodrama』では、僕とアーティストが共に自分たちの能力を確かめながら作業を進めていった。エラは非常に魅力的な立場にいた。彼女の2ndアルバムは大ヒット作であり傑作だ。1stアルバムがヒットした後でプレッシャーが高まる状況だったけど、彼女は自分の方向性に対する明確なビジョンを持っていたし、僕はプロデューサーとしての自分を発見するきっかけになった。だから、2人の才能を発揮できる実感があった。この作品に関わらなければ、今の僕はなかったと思う。



ー『Melodrama』中の楽曲「Liability」のレコーディングには、かなり時間をかけたと聞きました。

アントノフ:その通り。ヴォーカルとピアノだけの楽曲にすると決めたら、どちらもパーフェクトに仕上げなければならない。どんなに時間をかけても、満足の行くまでやりたいんだ。ヴォーカルが味気なくドライに感じたり、少しリバーブをかけたら寂しい感じになってしまったり、グランドピアノを使ったらサウンドがシリアスになり過ぎたりした。録音がローファイ過ぎると、曲の美しさや感情を無理矢理出そうとしている感じがする。バランスを取るのが本当に難しい。

ー「Green Light」の場合はいかがでしたか?

アントノフ:こちらも絶妙なバランスが必要で、あらゆる工夫をした。「オーケー、僕にちゃんとストーリーを聞いて欲しいんだな。それとも僕にバック転でもして欲しいのか?」という感じで、とてもスリリングな経験だった。良くも悪くもならない。すべきことが多かったが、何をすべきかが明確だった。仕上げるべき曲がいくつあるかは関係ない。取り組んでいる曲が自分に何を求めてくるかが重要なのさ。

ーテイラー・スウィフト『folklore』の成功の大きさは、驚きだったでしょうか?

アントノフ:レベルの高さに驚いたね。あの作品は素晴らしいと思った。アーロン(・デスナー)との曲もよかったし、僕がテイラーと作った曲もよかった。

彼女のファンにも響いたと思う。受けるかどうかはわからなかった。彼女は「とにかくやってみましょう」という感じで何度もやり直したし、僕も彼女のアルゴリズムに集中した。「彼女自身が満足のいく作品を作ることができれば、気に入ってくれるファンもきっといる」と僕は確信していた。僕がブリーチャーズで経験した状況と同じだ。万人受けする曲を作ろうとは思っていない。それぞれの街に1万人いるか、100万人いるかは関係ない。何よりも重要なのは、自分のファンを獲得することだ。そうすれば、誰からも文句の出ないくらいにビッグになれる。fun.がどれほどビッグだったか覚えているかい? 僕に質問しようとしなかったね。結局のところ、自分が表現しようとすることを全て会話に組み込むのは難しいということさ。


2021年3月のグラミー賞授賞式でパフォーマンスしたジャック・アントノフ、アーロン・デスナー、テイラー・スウィフト(TAS Rights Management 2021/Getty Images)

ー『Reputation』で初めてテイラーと共作しました。事前に彼女へ楽曲を送っていたそうですね。当時の経験から何を学んだでしょうか?

アントノフ:「彼女とはこういうやり方もできるんだ」と認識した。彼女とのクリエイティブな関係は、果てしなく広がる可能性がある。僕がこういう関係性を築ける人間は、そう多くない。特にクリエイティブな関係だ。しかも明らかにビッグな関係といえる。

ー『Reputation』は素晴らしいアルバムです。本当に過小評価されている作品なのか、それとも少なくとも最初のうちだけそうだったのでしょうか。

アントノフ:繰り返しになるが、本物のファンと、ちょっと聴きかじってコメントする人々との違いだ。カルチャー的にいろいろだし、あれこれコメントするのは簡単だ。でも僕としては好きな作品だ。振り返ってみてもいい作品だと思う。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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