歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

30位 - 26位

30
Korn
『Korn』 1994年

ニューメタルの幕開け

肉厚で重心の低いリフとラップのリズム、そして制御不可能な怒りを噴出させるジョナサン・デイヴィスの悲鳴のようなヴォーカルを組み合わせた彼らの音楽は、メタリカの信者でありながらニルヴァーナやトゥパックも聴く新世代のメタルヘッズたちに大いにアピールした。デイヴィスによる歌詞の内容は極めてパーソナルであり、アンフェタミン依存について歌った「Blind」や、幼少期に受けた性的暴行に言及する「Daddy」のインパクトは強烈だった。後者は当時のトラウマ的記憶をあまりに鮮明に蘇らせてしまうという理由で、バンドは本作の発表から20年間に渡って同曲をライブで一度もプレイしていなかったが、本作の発表20周年に際して行われた2014年のツアーの際に解禁している。B.S.



29
セパルトゥラ
『Chaos A.D.』 1993年

確固たるオリジナリティを確立

スラッシュメタル/デスメタル界隈のいちバンドに過ぎなかったセパルトゥラは、5作目となる本作でオリジナリティを確立してみせた。母国ブラジルの音楽の伝統的リズムの導入やオペラのようなヴォーカル(「Amen」)、そして「Refuse/Resist」の冒頭のアブストラクトなサウンド(死産したフロントマンのマックス・カヴァレラの子供の心拍音)に象徴されるテクスチャーへのこだわりには野心が感じられる。さらにハードコアやパンク、インダストリアル等を飲み込んだサウンドのプロダクションはよりクリーンになり、カヴァレラの社会政治的な歌詞が一層際立っている。マックスの弟でドラマーのイゴール・カヴァレラによるパーカッションは、バンドのグルーヴに沸き立つようなトライバル感をもたらした。K.K.



28
セルティック・フロスト
『Morbid Tales』 1984年

エクストリームメタルの原型

フロントマンのトム・G・ウォリアーとベーシストのマーティン・E・アインが初めて結成したデスメタルの先駆的バンド、ヘルハンマーは幾度となく屈辱を味わっていた。当時発行されていたアンダーグラウンドのファンジンはこぞってバンドのデモ音源をこき下ろした。だからこそ彼らは新たに結成したセルティック・フロストで何としても成功を収めなくてはならなかった。結果的に、バンドのデビュー作『Morbid Tales』は後に隆盛を誇るエクストリームメタルの原型となる。オビチュアリーのようなデスメタルバンドに大きな影響を与えた一方で、「Into The Crypts Of Rays」における躍動するリズムと艶のあるギターサウンドは、ダークスローン等のブラックメタルのバンドを感化した。K.G.

27
システム・オブ・ア・ダウン
『Toxicity』 2001年

9.11以降のアメリカを覆った不安を体現

気まぐれで怒りっぽく、確信犯的に感情をかき乱す、システム・オブ・ア・ダウンが2001年に発表した2ndアルバム『Toxicity』は、9.11以降のアメリカを覆っていた不安を見事に体現していた。ヘヴィなリフで幕を開ける冒頭曲「Prison Song」で、シンガーのサージ・タンキアンは「やつらは刑務所を建てようとしている」と囁く。アルメニア系アメリカ人4人からなるバンドが産み落とした本作は、チャールズ・マンソンの環境に対する姿勢(「ATWA」)や、アメリカの歪んだ司法制度(「Prison Song」)に言及しつつ、ジャズ、中東の音楽、ギリシャ音楽、そしてハードロックのあらゆるサブジャンルとミュータントを飲み込んだ、まさに変幻自在な音像を浮かび上がらせる。「特定のスタイルにこだわる必要なんてないだろ」。タンキアンは本誌にそう語っている。B.S.



26
アリス・イン・チェインズ
『Dirt』 1992年

不吉な予感に満ちた1枚

ニルヴァーナやパール・ジャム、サウンドガーデン等のバンドが音楽性を押し広げていったのに対し、アリス・イン・チェインズはメタルからの影響とタッチを明確に残しつつ、ダークで重厚かつ不吉な予感に満ちた『Dirt』を生み出した。凶暴なリフが悪夢を思わせる「Them Bones」から、アンセミックで不気味な「Would?」(1992年に発表された『シングルス』のサントラに収録)まで、ジェリー・カントレルの硬質なギターサウンドとレイン・ステイリーの金切り声が絡み合う本作には、冒頭から最後までただならない緊張感が漂う。重々しいアート・メタル的リズムが印象的な「Sickman」や「God Smack」、そしてアルバムにおける陰鬱なムードを一変させる、ステイリーがベトナム戦争に赴いた父親について歌った悲痛なバラード「Rooster」も強烈だ。B.S.



Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE