歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

10位 - 6位

10
パンテラ
『Vulgar Display
Of Power』
1987年

装飾を排除し
グルーヴメタル先駆者へ

80年代のパンテラはテキサスのいちグラムバンドに過ぎなかったが、1990年発表の『Cowboys From Hell』によって、リフに重点を置いたグルーヴメタルの先駆者へと転身した。しかし彼らがその本領を発揮したのは、タイトルがバンドの本質を物語る『Vulgar Display Of Power』だった。装飾を完全に排除し、ダイムバッグ・ダレルの断続的なリズムと悲鳴のようなソロ、ドラマーのヴィニー・ポールとベーシストのレックス・ブラウンによる鉄壁のリズムセクション、フィル・アンセルモの猛るシャウトという必要最低限の要素以外を削ぎ落とした。敵意をむき出しにするオープニング曲「Mouth For War」から、躍動するパワースラッシュ「Fucking Hostile」、不気味な殺人バラード「This Love」、2音を淡々と行き来する重厚な「Walk」まで、『Vulgar Display Of Power』に収録された楽曲はメタルにおけるクラシックと呼ぶに相応しいものばかりだ。R.B.



9
オジー・オズボーン
『Blizzard Of Ozz』
1980年

寄せ集めが生んだ
華麗なるカムバック

ブラック・サバスからの醜悪な脱退劇のせいで、業界におけるオジーの株は著しく低下しており、当時は忠実なファンさえも、彼がソロとしてシーンの最前線にカムバックを果たすとは思っていなかった。1980年9月にイギリスでリリース(アメリカでは6カ月遅れで発売)された本作は焦点が明確で楽曲は粒ぞろいであり、ハイライトと言える曲群(「I Don’t Know」「Crazy Train」、議論を呼んだ「Suicide Solution」等)はサバス時代の作風よりもはるかに洗練されている一方で、メタルの破壊力にも満ちている。「『Blizzard Of Ozz』は70年代のメタルを80年代仕様にアップデートした美しいレコードだ」。速弾きの達人スティーヴ・ヴァイは2011年にそう語っている。本作の原動力となったのは故ランディ・ローズであり、彼のクラシック譲りの超絶フィンガリングは無数のメタル系ギタリストに絶大な影響を与えた。「寄せ集めだった俺たちは、一緒にスタジオに入って曲を書いた」。彼は1981年にそう語っている。D.E.



8
メガデス
『Peace Sells ...
But Who’s Buying?』
1986年

冷めやらぬ怒り、
果たしたリベンジ

メガデスの2作目となるアルバム。辛辣なウィットが効いたタイトル曲「Peace Sells」についてデイヴ・ムステインはこう語っている。「あの曲を書いた時、俺は倉庫みたいなところに住んでた。俺たちみんなホームレスで、歌詞は壁に書いた。紙さえ持ってなかったからな。俺たちが出ていった後、誰かがその部分を削り取って持ち去ったんだろう」。ムステインの緻密かつハードな曲を書くスキルと、インパクト大な歌詞は本作の他の曲群にも反映されている。「The Conjuring」には彼の後のガールフレンドに向けた本物の黒魔術の言葉(ムステイン談)が含まれており、不倫をテーマとする「Wake Up Dead」は彼が女性との付き合いが苦手な理由を示している。音楽性の面にもまるで隙がなく、クラシック音楽に影響された「Good Mourning/Black Friday」「Bad Omen」「My Last Words」は圧倒的にドラマチックだ。全編において、ムステインは喉が張り裂けんばかりの声でシャウトし続ける。K.G.



7
モーターヘッド
『No Remorse』
1984年

不滅のシンプルな
フォーミュラ

ヘヴィメタルのバンドの多くはアルバムごとに音楽性を変化させるが、モーターヘッドは例外だった。彼らは40年以上にわたるキャリアにおいて、唸るベースラインとヴォーカル、猛スピードで突進するドラム、そしてごく基本的なリズムギターというシンプルなフォーミュラを実践し続けた。そのスタンスについて、レミーはSounds誌にこう語っている。「チャック・ベリーは決して変わらなかった。リトル・リチャードも然りだ。彼らがそうだったように、俺は自分の信じるフォーミュラに忠実であり続けたい」。『No Remorse』の29曲は基本的に全て同じと言っていいが、全曲が文句なしに素晴らしい。不運を嘆く「Ace Of Spades」、突進する貨物列車のような「Overkill」、アグレッシブなギターが炸裂する「Bomber」、どこまでも馬鹿げた「Killed By Death」、そしてアンフェタミン漬けの「Motörhead」のライブ音源まで、その勢いは一瞬たりとも衰えない。J.D.C.



6
スレイヤー
『Reign In Blood』
1986年

誰よりも
速くありたかった

スピードメタルの最高峰である本作は、BPMが210に達する「Angel Of Death」で幕を開けると、以降29分間にわたってその圧倒的テンションとスピードをキープし続ける。メタリカ、ヴェノムといった同時代のスピード狂たちのレコードと、スレイヤーの3rdアルバムとなる本作を差異化していたのは、プロデューサーのリック・ルービンの手腕だ。ヒップホップアクトとの仕事で名を馳せた彼は、当時流行していたリッチなリヴァーブを排し、まるで右ストレートのような即効性のあるサウンドを生み出している。「彼らのようなスピードと正確さを追求するパフォーマンスを広い空間でやると、何もかもぼやけてしまうんだ」。ルービンは2016年にそう語っている。「彼らの精密機器のようなプレイを際立たせるには、クリアで輪郭のはっきりしたサウンドが必要だった」。それは死の宣告たる「Necrophobic」や「Criminally Insane」のインパクトを強調し、最終曲「Raining Blood」(と不吉なイントロ)のおどろおどろしさを増長させている。K.G.



Translated by Masaaki Yoshida

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