歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

95位 - 91位

95
ドリーム・シアター
『Images And Words』 1992年

プログレメタルの一大叙事詩

ドリーム・シアターは1992年の時点でレコード契約と結成時のシンガーを失い、キャリアは陰りを見せ始めていた。ニルヴァーナがシーンを席巻していた時代に、超絶ギターテクとイエス譲りの複雑な鍵盤サウンド、オペラを思わせるヴォーカルが満載のプログレメタルを発表することは、もはや自殺行為に等しかった。それなのに、本作は思いがけない成功を収めている。バンドの音楽性とテクニックを顕著に示しているのが、果てしなく壮大な「Metropolis」と、10分を超える最終曲「Learning To Live」。90年代を通してプログレの火に薪をくべ続けた彼らは、ペリフェリーやビトウィーン・ザ・ベリード・アンド・ミーといった後進に大きな影響を与えた。R.B.



94
デフヘヴン
『Sunbather』 2013年

ブラックメタルの無限の可能性を示す

カリフォルニア州モデストでの高校時代、スレイヤーのTシャツを着ていたジョージ・クラーク(Vo)と、シャツにデッド・ケネディーズのワッペンを貼っていたケリー・マッコイ(Gt)はお互いを意識し、ごく自然な流れでバンドを組むことになったという。ブラックメタルの無限の可能性を示した2作目には、モグワイを思わせるポストパンク的ノイズと、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインにも通じるシューゲイズサウンドが同居している。「激情的な音楽、実験的なサウンド、物悲しいインディーロック。俺たちはその3つに等しく夢中になっていた。いろんな要素を組み合わせるのが俺たちのやり方なんだ。誰が何と言おうとね」とマッコイは語っている。R.S.



93
ホワイト・ゾンビ
『La Sexorcisto: Devil Music Volume One』 1992年

下半身を刺激するグルーヴ

一説によると、ブラック・サバスはリハーサルに使っていた建物の向かいにあった劇場で放映されていたホラー映画からバンド名を拝借したという。ホワイト・ゾンビにとってもホラー映画は大きなインスピレーション源だ。見た目はもちろん、楽曲にもホラー映画からサンプリングされた台詞や叫び声が散りばめられている。最大の魅力は『ファスター・プシィキャット!キル!キル!』のようなエクスプロイテーション映画から引っ張ってきた、どこかユーモラスな音楽性。彼らは呪われし者たちの社交場に集うゴーゴーダンサーが喜びそうなグルーヴを追求し、リスナーの下半身を刺激する。ラウドで痛快なサウンドは多くのヘッドバンガーズの支持を得た。J.D.C.



92
アイヘイトゴッド
『Take As Needed For Pain』 1993年

ルイジアナを代表するレジェンドへ

歓喜に満ちたニューオーリンズ音楽の背後には必ずと言っていいほど闇が存在するが、それはルイジアナに住むドラッグ漬けのならず者たちが、地元シーンを代表するバンドへと生まれ変わる原動力となった。ブラック・サバスとメルヴィンズに影響を受けたというバンドのヴィジョンについて、マイク・ウィリアムス(Vo)はDecibel誌に「できる限りスローかつアグレッシブにプレイし、人類を叩きのめす」と語っている。この2作目は生々しさと攻撃性はそのままに、パンク・ブルースというべき原始的なエネルギーに磨きがかかり、もはやスタイリッシュと呼べるほど。この街の反骨精神をこれほど浮かび上がらせたレコードを作ったバンドは他にいない。H.S.



91
ネイキッド・シティ
『Torture Garden』 1990年

メタルと異形なジャズの不穏な融合

因習打破を命題とするジャズ界の反逆児ジョン・ゾーンは、どんなに過激なものも音楽的素養として飲み込んできた。彼のプロジェクトの中で最も悪名高いネイキッド・シティでは、英国発のグラインドコアと、日本で猛威を振るっていたノイズパンクを吸収。全26曲(最も長い曲でも79秒しかない)からなる本作では、ヒリヒリするようなゾーンのサックス、ダウンタウンのジャズシーンの精鋭たちによるアンサンブル、山塚アイの金切り声が渾然一体となり、濃密で狂気に満ちたサウンドスケープを描き出す。ゾーンの分裂症的アプローチは、マイク・パットンなど固定概念に縛られないアヴァンメタル界の先進的アーティストに大きな影響を与えた。C.R.W.

Translated by Masaaki Yoshida

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