歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

1位

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ブラック・サバス『Paranoid』
1970年

ヘヴィメタルのグラウンドゼロ

「Iron Man」の不穏でアイコニックなリフ、「War Pigs」の分厚いアンサンブル、「Paranoid」のマシンガンのようなリズムギターが存在しなければ、ヘヴィメタルという音楽は全く異なるものになっていただろう。目前に迫った破滅、薬物中毒による死、核戦争、蛮行、無慈悲な独裁者、時空を超える愛、現実への失望など、オジー・オズボーンの切れ味鋭いヴォーカルが紡ぐ本作のあらゆるテーマは、以降無数のメタルバンドたちによって掘り下げられることになる。

戦後の暗いムードが漂っていた英国バーミンガムで育ったベーシストのギーザ・バトラーにとって、「War Pigs」や「Electric Funeral」で描かれるディストピアは現実味を帯びたものだった。ボンゴとジャジーなフラメンコギターのラインがヒッピー感を演出するラブソング「Planet Caravan」の冷たく非現実的な歌詞は、宇宙の彼方に放置される孤独感を描いている。「Paranoid」に登場する、“お前のジョークに俺はため息をつく お前は笑い、俺は涙を流す”等の堂々たるウィットに満ちたフレーズの数々は、彼自身が経験した鬱症状を表現したものだ。だがそれは人々の共感を呼んで大ヒットを記録した。  

『Paranoid』はブラック・サバスの現実を音像化したものでありながら、同じように人生に不満を抱えた無数の人々の理解と共感を呼んだ。その中には、後にメタルと音楽の歴史を刷新していくメタリカやパンテラ、スリップノットといったバンドバ等のメンバーも含まれている。「オズフェストに出てるバンドの連中は、一番影響を受けたのはサバスだって言ってくれる」。オズボーンはそう語っている。「俺自身はヘヴィメタルとの接点をまるで見出してない」。バトラーはかつてそう語った。「それでも、フォロワーよりはパイオニアって言われる方がいいよ」K.G.

Translated by Masaaki Yoshida

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