歴代最高のメタルアルバム100選|2021上半期ベスト

60位 - 56位

60
メルヴィンズ
『Bullhead』 1991年

メタルに急接近し、硬質に変化した3rd

ワシントン州で結成されてからの10年間、メルヴィンズは同時代のスラッジ寄りのパンクバンドとは一線を画す、ビーフハート的な抑揚を効かせたスタイルを追求していた。ブラック・サバスを倉庫に詰め込んで溶岩で溶かしたかのようなテクスチャーは、親交の深かったニルヴァーナにも影響を与えている。しかし彼らは、3作目となる本作でメタルに急接近。曲はより長く、演奏はより正確に、そしてプロダクションはより硬質に変化した。Borisのバンド名の由来となった同名曲では、ナマケモノのようなペースで進む3音のヒプノティックなリフが耳に残る。カミソリのように鋭い「Zodiac」は、グラインドコアの雄ブルータル・トゥルースがカバーした。C.R.W.

59
ナパーム・デス
『From Enslavement To Obliteration』 1988年

グラインドコアを確立した2nd

英国バーミンガム発のナパーム・デスは、アナーコパンクの精神と機関銃のようなサウンド、ミック・ハリスのコミカルなほどの高速ドラミング、そして極端に短い楽曲群のインパクトによって、グラインドコアというジャンルを確立した。この2作目は、ハリスの代名詞であるブラストビート、リー・ドリアンの獣のような雄叫び、ビル・スティアーのジェットエンジンを思わせるギター、以降30年間も一貫して在籍し続けるシェーン・エンバリーのベースという、クラシックラインナップによるクラシックサウンドが堪能できる唯一のアルバムだ。動物虐待や人種差別、男性上位社会などへの怒りをぶちまけた本作は、後年のシーンに絶大な影響を与えた。C.R.W.



58
ライフ・オブ・アゴニー
『River Runs Red』 1993年

自殺をテーマとするコンセプト作品

根深い鬱を描く本作は、自殺をテーマにしたコンセプチュアルなデビュー作。厭世、育児放棄、そして自殺(“我慢できず、俺は手首にカミソリの刃を押し当てた”というラインで幕を開ける「River Runs Red」)と、荒涼とした心象風景が浮かび上がる。ミナ・カピュートがバリトンボイスで歌い上げるグルームメタルとハードコアを融合させたような楽曲群だけでなく、自殺へと至る男の物語を描くヒップホップスタイルのスキットもインパクト抜群。アラン・ロバート(Ba)は絶望に満ちたラインの数々を、人生のどん底を経験していた頃に書いたという。本作の歌詞が辛い思いをしてきた人々を救ったことを知り、彼らはファンと積極的に交流している。K.G.



57
エンペラー
『Anthems To The Welkin At Dusk』 1997年

ダークな質感に満ちた暗澹たる作品

超高速のブラックメタルでシーンに衝撃を与えたデビュー作『In the Nightside Eclipse』を1994年に発表したエンペラーだが、その3年後には苦境に立たされていた。メンバーの1人が放火の罪で、また別のメンバーは殺人罪でそれぞれ収監されていたからだ。出所したサモス(Gt)が再加入したバンドは、前作の壮大な雰囲気を残しつつ焦点を絞った暗澹たるアルバムを完成させた。イーサーン(Vo,Gt)のドラマチックなストーリーテリングと悪魔崇拝、そして攻撃的なキーボードサウンドは本作における大きな魅力となっている。この作品はクラシシズムを備えたエクスペリメンタル系メタルバンドに大きな影響を与え、彼らが躍進するための土壌を築いた。K.K.



56
デリンジャー・エスケイプ・プラン
『Calculating Infinity』 1999年

型にはまらないリズムの徹底した追求

ロックにおける実験的リズムの追求の歴史は何十年にも及ぶが、デリンジャー・エスケイプ・プランの台頭によって、それはムーブメントへと発展した。彼らは徹底して型にはまらないリズムを追求。「これは音楽理論書に唾を吐きかけるようなアルバムだ」とベン・ワインマン(Gt)は語っている。本作の魅力は痙攣リズムや支離滅裂なハーモニー、鉄を切り裂く電動丸鋸のようなギターだけに留まらない。不思議なほどキャッチーでカタルシスを覚える楽曲は、ノイズやエネルギーを重視するハードコアバンドらしからぬロジックと構造に支えられている。拍子が目まぐるしく変化する彼らの音楽を、バンドの信奉者たちは「マスコア」と呼んだ。J.D.C.



Translated by Masaaki Yoshida

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