マネスキンが世界を席巻する理由とは? ロックンロールの救世主が語る野望と信念

マネスキンが体現する「自由」

そして2018年、マネスキンはデビューアルバム『Il Ballo della Vita』(「人生のダンス」の意)をリリースした。これは架空のミューズ「マルレナ」からインスパイアされた疑似コンセプト作品で、スカの影響が色濃く反映されている。そして2021年にリリースされた2枚目が『Teatro D’ira: Vol. 1』(「憤怒の劇場」の意)。この作品の方がバンドとしてのビジョンをはっきりと打ち出している感じがする。このアルバムの曲作りを始める前に、本物の音楽シーンで生きる生活を体験するために4人はロンドンに移り住んだ。「ロンドンでは毎晩多くのコンサートが開催されているし、たくさんのバンドのライブを見る機会に恵まれたわ。おかげでたくさんインスピレーションをもらったの」とヴィクトリアが述べる。

それに付け加えて、ダミアーノは彼らが必死に楽器の練習を行い、技術的な知識を増やすと「多くのチャンスが舞い込んできた」と説明する。そして『Teatro〜』のレコーディングでローマに戻り、演奏の純粋さを最大限に発揮するために、全曲スタジオでライブ録音した。彼らにとって、生のバンドサウンドこそ世界を魅了するサウンドなのだ。しかしラジオ局の反応は「現在のメインストリームの音じゃない」というものだった。

この生のバンドサウンドには重要なメッセージが込められている。マネスキンの音楽は、スタイルからも、歌詞からも「性の自由」がにじみ出ている。そして彼らは「I Wanna Be Your Slave」のミュージックビデオの奇抜さを誇らしく思っている。このMVにはマネスキンの精神と訴求力が存分に表れている。「あのビデオはセックスについてだし、性的な表現力についてよ。なりたい自分がどんなものでも自由になればいいし、そこに正解もないし、悪いこともない。それをあのビデオで見せたかったわけ」とヴィクトリア。



ファッションセンスやステージでの振る舞いを通してジェンダーや性規範を見事に蹴散らす彼らは、自分たちのファンからインスパイアされていると言う。マネスキンの音楽に救われて素の自分を受け入れたファンが多く、特に彼らの性的アイデンティティの容認に一役買っている。ダミアーノが説明する。「若い頃の俺たちは自分に自信がなかったし、自分が何者かも知らなかった。でも俺たち4人は一緒に成長する機会に恵まれ、互いをサポートしてきた。そんな体験をファンと共有したいし、みんなに自分らしさを保って欲しい。みんなに権利があるし、自分が共有したいものを共有できるし、誰にも批判されたり追い払われることなく、なりたい自分になる権利があるんだ」と。

この夏、マネスキンは各地のフェスティバルに参加することが決まり、そこでユーロビジョンでの優勝を祝う機会を得た。そして今年の年末までに3枚目のアルバムをリリースする予定で、これは去年から曲作りを始めた作品だ。そして、ツアー日程のブッキングも進んでいる。マネスキンの夢はアークティック・モンキーズ、ローリング・ストーンズ、フー・ファイターズなどのオープニングを務めること。ダミアーノはニヤニヤ笑いながら「もちろん、ヘッドライナーになりたいけどね」と言う。現在の彼らの勢いを鑑みると、彼らが思うよりも早い時期にその夢を叶うことになるだろう。

From Rolling Stone US.




マネスキン
『Teatro D’ira: Vol. 1』
日本盤CD 10月13日リリース
再生・購入リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/ManeskinTeatrodIraVol1

マネスキン 日本オフィシャルページ:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/

Translated by Miki Nakayama

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