ホイットニー「カントリーロード」カバーに感じる匠のドラム、鳥居真道が徹底考察

2016年のアルバム『Light Upon the Lake』の評判が良かったので、ホイットニーの名前は知っていましたが、それ以外のことは何も知りませんでした。彼らが二人組みだということも。ホイットニーはジュリアン・アーリックとマックス・カケイセックの二人からなるグループで、ボーカルのアーリックがドラムも兼任していると知り、さらに驚きました。ドラムとボーカルを兼任し、ファルセットで歌うという点では、アーロン・フレイザーを連想しました。そういえばドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの新譜も出ましたね。私は「Sexy Thang」という曲が一番好きでした。



アーリックの口から音符を放るような朴訥でドライな歌唱法は、ドラムのスタイルとも共通しているような気がします。いかにも名曲然とした曲を演奏するときに、ドラマーが情感豊かな感じを演出しようと変にタメを作ったり細かくオカズを入れたりライドをふにゃふにゃ叩いたりすると一気に素人臭くなるというのが私の持論です。アーリックの演奏はむしろ機械っぽくてドスが利いています。ドスとは? という疑問も湧くことでしょう。ドスの利いたドラムを叩く人の筆頭といえば、CANのヤキ・リーベツァイトを挙げないわけにはいかない。ジョン・レノンの「Mother」でリンゴ・スターが披露しているシンプルなパターンの繰り返しもかなりドスが利いています。急に無口になったときのデ・ニーロ的な恐ろしさがあるといっても良いでしょう。ディス・ヒートのチャールズ・ヘイワードもドスが利いていますが、彼はドスのネクストステージに到達している感じがあります。

我々にとってあまりにも馴染みのある「カントリーロード」であっても、ホイットニー版に照れくささを感じないのは、彼のレイドバックとは真逆の演奏方法にこそ、その秘密があるのだと思います。丁寧にメロディを歌ったほうが、かえって感情の機微を伝えるのと同様に、ドラムも情感に流されることなく、シンプルかつ素朴な演奏を心がけたほうが曲の味わいをしっかり伝えられるように思うのです。

Rolling Stone Japan 編集部

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