今や名実ともに日本を代表するハードロックバンドとして君臨する人間椅子。特に2010年以降、いくつもの印象的なターニングポイントを迎えながらデビュー30周年イヤーをひらりと飛び越えた昨年、そのヘビーサウンドをヨーロッパツアーで轟かせ、喝采を浴びるに至った。【動画を見る】『映画 人間椅子 バンド生活三十年』予告編2019年に発表した前作『新青年』は30周年記念作品となる通算21作目のオリジナルアルバムであったが、バンド史上でも大きなアルバムセールスを記録した作品となった。しかも、そこにサブスクの視聴回数まで含めると、人間椅子の音楽を聴いている視聴者の数はデビュー当時と同じか、またはそれ以上かもしれない。
今年、彼らは通算22作目となるアルバム『苦楽』を発表する。コロナ禍においても挫けることのないハートで立ち向かったレコーディングの末に生まれたのは、今の時代だからこその強い思いが込められた傑作だった。
今回はアルバムについてはもちろんのこと、筆者も足を運んだヨーロッパツアーのエピソードや曲づくりの苦労について3人に話を聞いた。
―最近、デビュー当時の頃かそれ以上の規模で人間椅子の音楽が聴かれているような気がするんですが、みなさんの体感としてはいかがですか?和嶋慎治(Gt, Vo):去年、海外ツアーへ行くチャンスが得られたという時点で、デビュー当時ぐらい聴かれてるかもしれないですね。僕らがデビューした頃のバンドブームは若い人が中心となった動きだったけど、あれから30年が経った今では僕らと同世代の人らも聴いてくれてるし、ありがたいことに若いロック好きの人もライブに来てくれるので、あの頃よりも幅広い層に受け入れられていると思いますね。
鈴木研一(Ba, Vo):売れているとは思ってなかったけど、この前、実家に帰って温泉に行ったら、温泉の店員さんから一緒に写真撮ってくれって声かけられて、「デビューしたての頃みたいに声かけてくる人がいるんだな」ってびっくりしました(笑)。マスクしてたのになんでわかったんだろう。
和嶋:それはわかるよ! 鈴木くんの場合はマスク関係ないね。
―(笑)。2年近く前に別の音楽サイトでみなさんにインタビューしたとき、記事のキャッチコピーが「今が絶頂期」だったんですが、今はさらに更新していますよね。ずっと上昇している感覚ってありますか?和嶋:2013年に「Ozzfest Japan 2013」に出たのが重大なターニングポイントで再デビューしたような感覚があったんだけど、その後もずっと登ってる感覚はありますよ。その前があまりに低迷していたから余計にそう思うのかもしれないけど。
―ノブさんはデビュー当時は別のバンドのメンバーでしたが、人間椅子を客観的に見ていた初期と実際にメンバーになった今を比べてみてどう感じていますか?ナカジマノブ(Dr, Vo):当時は同世代のバンドとして同じ時期にデビューをしたライバルというか戦友みたいな存在で、「人気あるな」「売れてるな」「頑張ってるな」という目で見ていたり、なんとなく近いところにいるイメージでした。2004年に加入してから思うのは、デビュー当時と今とで枚数とか動員に近いものがあったとしても、音楽的な見え方はちょっと違うんじゃないかなと。今は、人間椅子が表現したいことをより理解してくれている人がライブを観に来てくれているんじゃないかなって。デビュー当時はきっと、アイドル的な見方をする方もいたかもしれないけれど、今はちゃんと音楽を聴いて、生の演奏を体感するためにライブハウスまで足を運んでくれている人が増えているのかなあという感じですね。
―今のほうがバンドの本質的な部分を好きになってくれている人が多い。ナカジマ:もちろん、昔もそういう人はいたと思うし、バンドの音楽的な芯も変わっていないんですけどね。僕が加入してからも一足飛びではないけれどじわじわ会場が大きくなったり、会場が変わらなくても2デイズができるようになったり、30年かけて少しずつ大きくなってきてるんじゃないかなと僕は思います。