清春が初ブルーノート東京公演で魅せたヴォーカリストとしての進化・深化

2曲目は「洗礼」。ささやくような声と、シャウトを自在に織り交ぜ、歌の世界を表現してみせた。
ここまでも素晴らしいパフォーマンスだったが、硬さがなかったわけではないように思えた。

が、3曲目の「cold rain」でスーパーボーカリストの本領を発揮した。この曲は最初の2曲よりもテンポが遅い。テンポが早い方が勢いとノリで会場を盛り上げて、自分の空気に染めやすい。が、テンポがかなり遅いこの曲で、清春は身体をゆっくり揺らしながら伸びのある声をオンマイクで会場に響かせた。現在、清春が行っている『残響』という有観客ライブはクラッシックコンサートのハコを使用していて、マイクは使うものの、マイクを外して、素の声をホールに響かせるパフォーマンスを随所でしている。その『残響』と対をなすようにこのブルーノートのステージではオンマイクで、ブルーノートの会場に自らの歌を隅々まで響かせた。


photo by 森好弘

この戦略は素晴らしかった。『残響』で使用しているクラッシックコンサート用のホールは、音を響かせることにプライオリティが置かれてホールが作られている。だが、ブルーノートはいい意味で違う。食事やドリンクの楽しみながらライブを観る空間で、ホール内にはそのための機材やデコレーションが多々ある。そうした物に音が吸われてしまい、素の声ではホールの隅々までは生声は響かないはずだ。この空間に声を響かせるのはオンマイクで歌うのがベスト。「cold rain」のゆったりとしたテンポでオンマイクの清春の圧のある歌は、確実にホールの隅々まで行き渡わたり、会場の空気を完全に支配した。

実際、この清春の緊張も完全なくなったように見えたし、いい意味での余裕のパフォーマンスに変わっていった。

Rolling Stone Japan 編集部

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