ザ・クラッシュ『サンディニスタ!』 散漫かつ過剰な3枚組が大傑作となった理由

ザ・クラッシュ(Photo by Lisa Haun/Michael Ochs Archives/Getty Images)

ザ・クラッシュが『サンディニスタ!』を世に問うてから40年が過ぎた。本作はレコード6面すべてが地雷探査のようであり、バンドの到達点と大麻常用者によるゴミが混在している。今なお議論のタネとなっている大作を、名物ライターのロブ・シェフィールドが振り返った。

遡ること40年前、アメリカのレコードショップに奇っ怪な新譜が登場した。今ではパンクロックの代表格として知られるロンドンのバンド、ザ・クラッシュのヴァイナル盤3枚組『サンディニスタ!』だ。『ロンドン・コーリング』が世界を席捲し、彼らの名をあまねく轟かせてからまだ1年しか経っていなかった。同作は全米トップ40ヒット「Train in Vain (Stand by Me)」を彼らにもたらした。しかし今度の音には、バンドが自身の初ヒットに乗っかるつもりなど毛頭ないことが明らかだった。『サンディニスタ!』はダブレゲエによるおふざけや各種の音響効果、あるいはプロト・ラップといった実験にあふれていた。最終第6面の最後にはメエメエ鳴く羊のコーラスまで登場している。しかも曲名は「Shepherd’s Delight」(=牧羊犬のお楽しみ)だ。このアルバムはまっとうな商業作品なのか? アルバムのタイトルは、少し前に米国からの支援を受けていた独裁政権の転覆に成功した、ニカラグアの革命組織に由来している。では、若き米国市民の諸君、どうぞご一緒に。「サアァァァーンディ、ニスタアァァァァァァアーッ」


『サンディニスタ!』が歌詞に出てくる「Washington Bullets」

クラッシュはここで傑作をあえてひっかき回すというリスクを冒しているのだが、しかしファンの多くには、この時期のバンドはキャリアにおいてもっとも退屈で締まりがなく、最高に無礼かつ粗野で、すっかりくたびれ果てているように思われてしまった。そもそも、なぜ3枚組だったんだ?

「それっぽい理由もいろいろ言われてるけど、そんなのないよ」

1982年、ジョー・ストラマーはローリングストーン誌にこう語っている。

「全部しょうもない話さ。基本ジョークなんだ。こんな噂があったんだよ。俺らが『ロンドン・コーリング』を2枚組で出した後、スプリングスティーンが『ザ・リバー』をやっぱり2枚組で発表したもんだから、俺らが怒り心頭になったっていうんだ。それでこう考えた訳さ。“よっしゃブルース、これでも食らえ”ってな」

Translated by Takuya Asakura

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