甲本ヒロトが語る「あきらめる力」と「夢は叶う」の意味

―ライブDVD「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」で2021年2月20日 東京ガーデンシアターで開催された有観客ライブの模様を拝見したんですが、お客さんは声は出せないものの、盛り上がりという意味ではこれまでと変わらない様子を感じました。ヒロトさんご自身はどのように感じてステージに立っていましたか。

もともと自分は、ライブ中にお客さんのことはたいして意識してないんだよっていう風に、インタビューとかで訊かれるたびに答えていたんです。本当に意識していないんだったら、お客さんが声を出していない状態だとか、客席が1つずつ空いていたりとか少なくなっている状態が気にならないはずなんです。そして実際にやってみたら、本当に気にならなかったから、「あ、僕はやっぱりお客さんのことを意識してなかったんだな」って確認した。もともと、お客さんの顔とかも見ないし、誰かに何かを訴えかけるつもりで歌ってもいないし。自分の在り方を再認識できたんです。お客さんがいようがいなかろうが関係ないんだなって。あ、でもいないのはやっぱり良くないと思う。何人かいて、観てくれている。それでいいんだなって思った。だから、1人でもいいんです。

―2020年12月11日に行った配信ライブはお客さんがいない状態でしたよね。そのときはいかがでしたか?

あれはやっぱり1人もお客さんがいない状態だったから。そこに撮影スタッフ、日頃から僕らのことを手伝ってくれているスタッフも同席していたけど、彼らを「お客さん」だとは思えなかったんです。彼らは一緒に何かを発信する仲間だと捉えていたから、やっぱりそれはね、少し意識した。「ああ、お客さんいないなあ」って。やりづらいというのとは違うんだけど、何かいつもと違う感じでした。だけど、次に有観客でやったライブに関しては、お客さんは少なくしたけれども、何も気にならなかった。誰かがいてくれればそれでいいんです。

―それは極端な話、1人でも1万人でも変わらないですか。

たぶんそうだと思う。お客さんが騒ごうが静かにしていようが、手拍子をしていようが全然大丈夫。声を出す出さないも自由だし。黙って観ててもいい、全然乗らなくてもいい、椅子に座っていてもいい。とにかく、自分が一番楽しいやり方なんだってその人が思えばいい。だってそのためにさ、お小遣いを払ってチケットを買ってるんだから。僕らのためじゃないよ、自分のためにチケットを買ってきてるんじゃん。好きにしてくれよって。バンドが喜ぶ見方なんてないんだから。バンドはみんながどんな状況でも一生懸命やるって、これまでもインタビューとかで言い続けてきました。今回、それが本当だったんだなって認識できた。全然、騒がなくてもいいよ。でもかわいそうだったのが、大声で叫びたいのに叫べなかった人たち。それは申し訳なかったと思う。僕らは全然平気。みんなは大変だったけどね。

―シングル6カ月連続リリース企画「SIX KICKS ROCK&ROLLプロジェクト」は、7インチアナログ盤と CD を 6 ヵ月連続で発売するという、最高にワクワクする企画です。このプロジェクトはどんな発想から生まれたんですか?

これは、年がら年中ツアーをずっとやっていた人間たちが、ポカ~ンと何もしない時期に、何かやりたくて仕方なかったんだよね。僕らができることってやっぱり作品を発表することしかない。じゃあ何か毎月面白いことをして、こんな発表の仕方がいいんじゃないかっていうことが1つ。それから、レコードの歴史の中でアルバムというものは後から出てきたもので。もともと、A1曲、B1曲がレコードじゃないですか。アルバムっていうのは、それを何枚もまとめて聴きたい人のために、本当に(写真を入れる)アルバムみたいに、何枚も入っているというのが「アルバム」で、言葉だけが残っているんですよ。

―写真を収めているアルバムから転じてそう呼ばれるようになったということですね。

そう、それが本来のアルバムなわけで。だから、これがアルバムの本来の姿だと思えばいいと思う。

―それで今回アナログでは12インチレコードのアルバムは出さないわけですか。

そうです。6枚バラバラの方が、めくって見るという本来の意味のアルバムができたので。

Rolling Stone Japan 編集部

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