マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ケヴィン・シールズが語る過去・現在・未来

ケヴィン・シールズ(Photo by Takanori Kuroda)


「シカの研究」と再始動の経緯

―ちなみに、音楽以外で今あなたが関心を持っていること、インスピレーションの源になっているものがあったら教えてもらえますか?

ケヴィン:僕らは今、こうやって自然豊かな環境で暮らしているので、まずコロナの影響で鳥が増えたんだよね。ブラックバード(クロウタドリ)って、知能的にはチンパンジーに匹敵すると言われているので、試しに餌付けをしてみたり、ちょっと呼びかけてみたりとかしているんだけど、その反応がすごく面白くて。

―そういえば以前は、「ミツバチと仲良くなった」とおっしゃっていましたよね(笑)。

ケヴィン:それと、僕らの家の周りにはシカが1600頭くらい棲んでいるのだけど、実は日本に起源を持つシカが大陸を渡ってヨーロッパまで移動してきたらしくて。現在は世界中に生息しているって知ってた?

―いえ、知らなかったです。

ケヴィン:シカの群れを眺めながら、「これってドナルド・トランプを含む今の世界の縮図のようだな」と思ったんだ。例えば、数十頭のシカがいるとする。その中にはものすごく臆病で、彼らの姿を見るとすぐに逃げてしまう連中もいれば、全く意に介せず僕らの様子を観察している連中も半分くらいいる。で、意に介さないどころかむしろこちらを威嚇してくるような連中も、ごく一部だがいるんだ。僕らはそいつらのことを「パンク・ディアー」と呼んでいるのだけど。

―はははは。

ケヴィン:そのパンク・ディアーを追い払おうとすると、逆に他の連中がパニックを起こして柵にぶつかったりしてしまうから、僕らとしても対策を考えなければならないんだけど。そういうマイノリティであるパンク・ディアーは、ハンターなどには狙われやすいんだよね。でも、そうやって一つの群れの中に様々なタイプがいないと、種として生き残っていないのかも知れない。すべてのシカがパンク・ディアーみたいだったら、群れは全滅してしまう。人間社会に置き換えてみると、例えばビビっていつも逃げてばかりいる連中もいれば、もっとオープンかつ物事をじっくり観察する連中もいるし、好戦的なパンクスもいて世界は成り立っているというか。トランプに煽動されて議事堂に乗り込むような右傾化した連中だって、その構成要素というか……僕、喋り過ぎてないかな、大丈夫?(笑)

―いえ、とても興味深いです。ニホンジカのこととかも調べたのですね。

ケヴィン:こっちにいるシカのほとんどが、日本に起源を持つことを知って「どうしてだろう?」と思ってね。すると日本にはシカがたくさん生息している島があって、ツーリストが大勢やってきて餌を与えているということも知ったよ。シカって、意思伝達のためにいろんな「音」を発するんだ。僕ら2匹の犬と暮らしているのだけど、犬とシカを鉢合わせないように柵をめぐらせ、犬のスペースを3エーカー(12平方キロメートル)くらい設けているんだ。にも関わらず、さっき話したパンク・ディアーが柵を乗り越えて犬のスペースに入ってきて、犬をけしかけたりするんだよ。その時に、犬に向かって“だけ”出す「音」というか、ちょっとメロディックな鳴き声もあるんだよ(といって、口真似をする)。

―その声にインスパイアされたサウンドも生まれるかも知れないですね。というわけで、そろそろ音楽の話をしましょうか(笑)。

ケヴィン:そうしよう(笑)。

―まず、Dominoに移籍した経緯から教えてもらえますか?

ケヴィン:ずっとレーベルは探していたんだ。他にも色々……例えばWarpとも話をしたし「面白いかな」と思ったこともあるのだけど、やっぱりDominoはオーナーと30年近く個人的な付き合いもあってさ。僕らとしてはインディ・バンドというところにすごくこだわりがあるので、そこを重視したいという姿勢を分かってくれるという意味でもDominoは僕らにとってパーフェクトなレーベルなのかなと思ったんだ。

―MBVの楽曲が一時期、サブスクから姿を消したのは、何か意図があったのですか?

ケヴィン:僕らは音楽の原盤権を持っていたけど、それをどう扱うかに関しては全てソニーUKが管理していたんだ。その契約が切れたのが、ちょうどコロナ禍と重なってしまってね。通常だったら9月くらいには戻っていたはずなんだけど、僕らがのんびりしていたので少し間が空いてしまったんだよ。特に何か、サブスクに対して思うところがあったわけじゃない。さっきも話したように、僕自身がSpotifyに登録しているし、変なこだわりを持つのは馬鹿げていることに気づいたというか。むしろ、今は(MBVも)積極的に展開すべきだと思っているよ。

Translated by Kazumi Someya

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