Emerald・中野陽介と手島将彦が語る、音楽家として追求する「心豊かでいるための音楽」

手島:特にポピュラーミュージックの業界だと、まだ経験も知識も少ないすごく若い時に、既存のシステム側の自分よりも年長の人たちと、誰とも相談できない状況で自分の責任でコミュニケーションしなくちゃいけないことが多くて、そのときになんとなく上の人の話をそのまま聞いちゃいがちなんですよね。聞いた方がいい面ももちろんあるんですけど、提示された少ない選択肢の中に「そういうものなんだろう」と自分を当てはめるべきと思いがちなので、そこで無理が起きやすいかなっていうのは、自分含めいっぱい見てきました。

中野:お金を出してくれている人が一番強い権利を持っている状況になると、その人の言うことを聞かないと作品がリリースできないんですよね。そうするとクリエイティブ全部を出資者に握られてる状態になるんですよ。僕からしたら歌を歌うことって命と同義なんですよね。その生殺与奪の権利を他者に完全に握られてしまっている状態は怖いことだなって思ったんです。

手島:そういう力を持っている立場の方の自覚がなかったりするんですよね。そのくらいの力と責任を持ってるからこそ、無自覚に「こういうもんだ」って当てはめていっちゃうのは結構な暴力になるんだよっていうことには気をつけてほしいですね。

中野:手島さんがよく仰る”大概のことはシステムや社会のせいだ”っていう言葉に救われることもあって。誰かや社会のせいにして自分の責任や頑張りを放棄するって意味ではないんですけど、やっぱりシステムがおかしいなって思うところはあるんですよ。でも、システムのこと批判したところでシステムが変わるのもめちゃくちゃ時間がかかるじゃないですか。でも現状は辛いわけで。その地獄の渦中にいると、システムのこととか考えられなくなっちゃうって思って。だけどこの歳になってやっとバンド10年続けてきて10年間を俯瞰で見た時に、サブスクとかフィットする場所が出てきたりして僕らも活動しやすくなったり、版権を取らずにプロモーションを頑張ってくれるFRIENDSHIP.みたいなところが出てきたりして。そういう流れの中で、僕も仕組みに目が向くようになっていったんですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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