シティ・ポップの源流、70年代後半の名曲を本城和治と語る

愛は突然に・・・ / 加橋かつみ

田家:本城さんが選ばれた今日の1曲目、いきなり歴史的な曲であります。加橋かつみさん「愛は突然に・・・」1971年の曲です。5月に発売になりました。シングルだったんですよね?

本城:そうですね。これ、シングルカットにしたんですよね。

田家:アルバムは2枚目のアルバム『1971 花』の中に入っていた。

本城:これピアノを弾いてるのユーミンなんですよね。たぶんユーミンが弾いてもらった方が感じが出るんじゃないかと思って。そしたら、「Aじゃないと弾けない」って言うから、「いいよ、それで」って言ってキーがAになったんですね。ユーミンが弾きやすいキーに。

田家:へー! 詞は加橋かつみさんなんですけど、これはどういう経緯で?

本城:ユーミンは当時、JSとかロック関係の。

田家:追っかけだったと(笑)。

本城:追っかけみたいな。いろいろなミュージシャンとの付き合いがあってね。これはユーミンのデモテープをスピード・グルー&シンキだったかな。僕はシンキは直接知らなかったのですが、そのテープが加橋かつみ経由で渡って。加橋くんから「これおもしろいからちょっと聴いてみてよ」って聴かせてもらって、3曲ぐらい入っていたんです。どれも今まで聴いたことないような、「えーこんな作家がいるんだ」と思って。アメリカンポップスのような曲が多い中でヨーロッパ、特にイギリスの感じがする曲が書ける人って他にいないなと思って。こういう雰囲気は加橋くんに合うなと思って、その中で1曲選んで、加橋くんが日本語に詞をつけて、レコーディングしたんです。

田家:その時、高校生だというのはご存知だったんですか?

本城:もちろん知ってました。それで、スタジオに放課後来てもらって。

田家:村井邦彦さんにユーミンを紹介された。

本城:加橋くんの曲は、フランス・バークレーの原盤でやっていたんですね。バークレーの繋がりでアルファ・ミュージックが出来ましたから、アルファーの出版になった。アルファ・ミュージックのスタッフがレコーディングに来てましてユーミンにアルファの人たちを紹介して、「アルファ・ミュージックで契約しなさい」って僕が言ったの。結局、村井邦彦と契約したわけですね。作家契約。私もユーミンのデモテープを聴いて、おもしろい声で、「歌うつもりないの?」って言ったんです。そうしたら「私はそういうつもりないです。作家志望なんで」って言うから、「あ、そうなの」と。当然作家としてアルファでやっていくだろうと思ったんで、歌手になったのでびっくりしました。

田家:松任谷由実さんの歴史がここから始まりました。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE