チャーリー・ワッツから感じるロックンロールのリズムの成り立ち、鳥居真道が徹底考察

ところで、チャック・ベリーの曲を初めて耳にしたのはいつのことだったのでしょう。おそらくそれは小学生のときにテレビで観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公マーティが演奏する「Johnny B. Goode」を聴いたときのことだったはずです。エレキギターへの憧れはこの場面によって植え付けられたのだと思われます。そうした意味で罪深いこちらのシーンは、一方でロックンロールのリズムの成り立ちを考えるうえでも非常に勉強になる場面でもあるのです。



『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は1985年から30年前の1955年にタイムスリップした主人公が、タイムパラドックスに関する諸問題を解決しつつ、元の時代へと帰ろうとして七転八倒する映画です。

件のシーンにおいてマーティはダンスパーティーで父と母を結びつけるというミッションがありました。マーティの両親はバンドが演奏するバラードに合わせて踊っているときに良い感じのムードになり、キスを交わしたことで結ばれたそうなのです。しかし、そのバンドのギタリストは、ビフたちによってトランクに閉じ込められたマーティを助けた際に怪我を負ってしまいます。これでは演奏を続けるのは無理だというバンドの面々にマーティは食い下がります。そこで自らギタリストとして名乗りあげ、代役を務めることになります。

マーティが彼らと演奏した曲はペンギンズのヒット曲「Earth Angel」でした。1954年のヒット曲で、リズムは6/8拍子のいわゆるハチロク。バンドは他にもジミー・フォレストの「Night Train」といった曲をレパートリーにしていました。1951年リリースのシングルで、のちにジェームズ・ブラウンもカバーしています。映画ではアール・ボスティックのややテンポを上げたヴァージョンを参考にしたそうです。どちらも3連系です。

「Earth Angel」の演奏がなかなか好評だったマーティにもう一曲やろうという申し出がありました。そこで1958年にリリースされた「オールディーズ」である「Johnny B. Goode」を演奏するわけです。バンドの面々はロックンロールというスタイルの音楽をまだ知らないので、当時のR&Bマナーでマーティの演奏に応えます。つまりスウィングのリズムで演奏するのです。一方、マーティはチャック・ベリーよろしくスウィングしないイーブンの8分音符でリズムを刻みます。

Rolling Stone Japan 編集部

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