GSとカレッジフォークの仕掛け人・本城和治と振り返る、ジャンルを越えた名盤

ニ十才の頃 / かまやつひろし

田家:1970年2月発売、かまやつひろしさん、アルバム『ムッシュー~かまやつひろしの世界』から「二十才の頃」。作詞がなかにし礼さんで、作曲がかまやつさん。なかにし礼さんは安井かずみさんと一緒にコーラスでも参加しております。この曲は今井美樹さんが絶賛して、自分でもカバーしているのですが、今井美樹さんの「二十才の頃」もいいです。もし機会があれば。

本城:これは最初、井上順のアルバムで、井上順と当時の奥さんの青木絵美が歌ってます。

田家:当時からいい曲だなと思われてました?。

本城:そうですね。これはスタンダードに残る曲だなと思っていました。

田家:このアルバム『ムッシュー~かまやつひろしの世界』はどんなふうに思い出されますか?

本城:ちょうどこのアルバムを作った頃に日本でもマルチ録音をするようになってきて、スタートはザ・スパイダースのアルバムでムッシュが実験的に1人多重録音を始めたことなんです。マルチトラックが開発されなきゃ、こういう録音はなかなかできなかった。彼はそういった意味では先駆者ですよね。ポール・マッカートニーはこの後、1人で録音をしましたけども。

田家:ポール・マッカートニーより早い(笑)。それは声を大にしなければいけない。このアルバムの中には石坂浩二さんが詞を書いていたり、ショーケンが詞を書いていたり。かまやつさんの人脈がいろいろな形でここに集まっているアルバムでもあったなと思いました。60年代終わりから、70年代の頃の才能とかセンス、冒険心について、多重録音、自宅録音が当たり前の今の時代の人たちにお話しされるとしたらどんなことでしょう。

本城:今の人たちだったら簡単にこういうことができるだろうけど、当時はほとんど不可能に近い状態で。よく彼はやったなと。そういった意味では本当に時代の先を行っていたと言えると思いますし、今の人たちは逆に言うと羨ましいなという気がします。

田家:かまやつさんの話が次の曲にも続くわけですが、この『ムッシュー~かまやつひろしの世界』にはティーブ釜萢さん、お父様と一緒にやっているデュエット。「僕のハートはダン!ダン!」という曲もあるのですが、この翌年1971年にはお父様との共演盤というのも出しております。今週は海外録音、多重録音、そして次のアルバムは親子録音というアルバムです。1971年発売『ファーザー&マッドサン』から「Walking My Baby Back Home」。これCDになっているみたいなのですが、ほとんど手に入らないということで、アナログ盤からお聴きいただきます。ティーブさんは日本ジャズ学校というジャズの学校の校長さんだったのですが、ジャズのスタンダードの味を聴かせてくれます。

Rolling Stone Japan 編集部

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