ネブカドネザル、ヨブ記、黙示録…神学をモチーフにしたアイアン・メイデンの世界観【インタビュー】

アイアン・メイデンのVo、ブルース・ディッキンソン(Photo by Amy Harris/Invision/AP)



ブルースが神学に惹かれる理由とは?

ー「過ぎ去った未来の日々」の歌詞に、それはどういった形で現れているのでしょうか?

あれはグラフィックノベルが原作の映画『コンスタンティン』のストーリーに基づいてるんだ。キアヌ・リーヴスが演じるキャラクターについての曲と言っていい。彼は神の意思の従って救いを求めながらこの世をさまよい歩いてるんだけど、その神様ってとんでもなく巧妙なナルシストだと思わないか? 人を巧みに操作するナルシシズムっていう概念は『ヨブ記』にも出てくる。「お前の人生を台無しにしてからお前を愛してやる」なんて、一体どんなサイコパス野郎なんだって感じだろ? ポッドキャストではそういう議論をしてる。俺は少しひねりを加えたかったから、主人公は神の要求に応じるどころかブチ切れてるっていう設定にしたんだ。「一体どんな権利があって、お前は俺にこんな厄介ごとを押し付けるんだ?」っていうのが、このキャラクターの基本的なスタンスなんだよ。

誰も気づいてないだろうけど、俺は「イカルスの飛翔」(1983年作『頭脳改革』に収録)でも似たようなアプローチをやってるんだ。イカルスの物語の要旨は「父親の言うことを聞かないと酷い目に遭う」ってことだけど、あの曲では父親が悪役になってる。「若者に翼を与え空を飛ぶことを教えれば、それがどういう結果を招くかぐらい分かるだろ?」っていうね。



ー最近のあなたからは神学への関心が見て取れます。ご自身はどういった哲学をお持ちですか?

まともな人間であろうってことは意識してるけど、それ以外には特にないんだ。でも、俺はあらゆる形態の過激主義を嫌悪している。自分と異なる人や集団の存在から目を背けるなんて、まさに愚の骨頂だ。俺は自分を穏健なリベラル派だと見なしていて、そういうコンセプトの大半を信じてる。政府は能無しで、大抵のことは市民が管理した方がうまくいくってこととかね。その一方で、人々が偏屈になって互いを思いやることができないような状況では、毅然とした態度をとるべきだとも思ってる。でもそういう考え方のどれひとつとして、宗教的な価値観とは無関係なんだ。俺は教会には行かないし、祈りを捧げることもしないからね。

ー『戦術』に収録されている「漆黒の時」で表現しようとしたことは?

あれはチャーチルを題材にした曲なんだ。彼は多くの過ちを犯し、人間的にも欠点がたくさんあったけど、彼は世界中を恐怖に陥れた独裁者ヒトラーに立ち向かった。多くの識者から反対されていたにもかかわらずね。政府の人間の半分は彼の行動を支持しなかったけど、喧嘩腰でアル中で常に不機嫌なあの年寄りはこう言い放ったんだ。「だめだ。私はもううんざりなんだ。やつの思い通りにはさせない。絶対にな」

でも彼が多くの間違いを犯したことも事実で、「王座のそばで裸になっている」っていうサビの部分はそれを表現している。黒い犬に付きまとわれるっていう部分は、彼が鬱に苛まされていたことを示してるんだ。あと、曲の冒頭とエンディングの両方で波打ち際の音を使ってる。イントロの方は、ネプチューン作戦が終わってイギリス軍が撤退したダンケルクで録った。どっちのビーチも、異なる理由で血の色に染まったという点が共通しているんだよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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