泉谷しげるデビュー50周年、エレックからフォーライフへの変遷を本人と振り返る

ねどこのせれなあで / 泉谷しげる

田家:76年10月発売、ライブアルバム『イーストからの熱い風』の中からの「ねどこのせれなあで」。2枚目のアルバム『春夏秋冬』の中の曲でありました。ライブはロサンゼルスの名門ライブハウス、トルバドール。

泉谷:これはやりたくてやったんだけど、あらためて聴いてみると自惚れてますね。ダメです。自信過剰ですよね。精度を上げたいつもりでやってはいるんだけど、謙虚さがない。

田家:ははは! 76年7月28日。トルバドールはボブ・ディラン、ニール・ヤング、エルトン・ジョン、ビリー・ジョエル、ジャニス・ジョプリン。西海岸の老舗中の老舗。『家族』のテープを向こうに送って聴いてもらって、いいよ、になったという。

泉谷:俺はすごいぞってものを見せたくてやったんだろうね。もう歌で分かりますね。声の出し方で分かる。

田家:何が違いますか?

泉谷:やっぱり、品を作っているというか、表現をやりすぎてる。ちゃんと曲に向き合ってるとあまりこねくり回さないんです。ストーンっと歌ってるのにこれは低くしたり、高くしたりとか小技をいっぱい使ってる。まさしく自信過剰です。

田家:でも、他の曲では叫んだりしているところがありましたよ。

泉谷:それは単なる脅してやろうですよね。そういうこと1個1個に対して、ちゃんと反省しないとダメです。

田家:ロスの名門に殴り込んでやろうみたいな意識はあったんじゃないですか?

泉谷:ありますよ。だからもちろん、この後もいろいろな人と知り合いになったし、他の店で3年間やってくれねえかとか言われたんだけど。やっぱりどこか自分の中では調子乗ってんじゃねえぞっていうのがあったんだろうね。

田家:アメリカの人たちがお客さんにいて、当然、日本のライブと違うものはいっぱいあったわけでしょ?

泉谷:アメリカというのはなんでもわ―となると思ったら大間違いで、厳しいんです。ぶすっとしてますよね。

田家:聴いてやろうじゃないかみたいな。

泉谷:そうそう。おもしろくなかったら帰るぞみたいな人たちですから、すごいやりがいはあったんだけど。なんでこの曲で受けてるかって言ったら、黒い壁があったんだけど、そこに転写したり、英語の歌詞を作ったんです。アートにしてるんですよ。

田家:歌詞は伝わっているんだ。

泉谷:言っていることは伝わってるんですよ。だから、笑ったりしているんですね。まあ、日本人かもしれないんだけど。そういう意味では日本語で自信過剰に突きつけたかったというのも含めてそうだけど、アメリカの音楽の深さとか、客の深さを目の当たりできてよかったなと思います。すごく厳しい客に会えて、よかったなって思いますね。

田家:そういうことが影響したのかどうかをこの後、お訊きしたいと思っているのですが、泉谷さんの路線が激変します。

Rolling Stone Japan 編集部

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