オアシスに誰もが熱狂した理由とは? 『ネブワース1996』で振り返る絶頂期の勇姿

『オアシス:ネブワース1996』ポスターより(Courtesy of ソニー・ミュージックジャパンインターショナル)


ジョン・スクワイアも見せ場を演出

ところで、ノエルも認めている通り、このバンドには強力な技巧を持つリード楽器奏者がいない。ノエルは味のあるギタリストだが、それは彼が作るフレーズありきの話で、本質的にはソングライター兼アレンジャーだと思う。派手に踊ったり走り回ったりするメンバーもおらず、リアムがたまに客を煽る以外は、基本的にステージ上での動きが乏しいバンド。このような大舞台を乗り切るのは楽じゃなさそうに見える。しかしネブワースでは、メンバーの代わりに見せ場を作ってくれるゲストが二人いた。

まず一人目は、ブルースハープで参加したマーク・フェルサム。パブロック隆盛期にナイン・ビロウ・ゼロの一員として脚光を浴び、その後セッションマンとして場数を踏んできた筋金入りのハープ奏者だ。そのマークの泣きまくるハープをフィーチャーした「The Masterplan」は圧巻。ストリングス&ホーン・セクションも入れて、壮大なスケールでじっくり聴かせる。「Don’t Look Back In Anger」もそうだが、近年のノエルの堂々としたヴォーカルが耳に馴染んでいるので、オアシスではこんなデリケートな歌い方をしていたことも久々に思い出した。

そしてもうひとりのゲストがさらに強力。この年の4月にストーン・ローゼズから脱退したばかりのギタリスト、ジョン・スクワイアが終盤の「Champagne Supernova」に登場する。演奏シーンにはストーン・ローゼズからオアシスへの「王位継承」についてノエルの強気なコメントが被せられるが、黒のレスポールを抱えた立ち姿といい、感情の赴くままに弾き倒すギターソロの切れ味といい、ジョン・スクワイアのカリスマ性はやはり圧倒的。ここが映画のクライマックスのひとつなのは間違いないだろう。彼は翌97年、新たに結成したシーホーセズのデビュー・アルバム『Do It Yourself』を全英2位に送り込み、華々しくカムバックを果たす(同作にはジョンがリアム・ギャラガーと共作した名曲「Love Me And Leave Me」も収録)。シーホーセズは後期ストーン・ローゼズの延長線上にありながら、オアシスからの影響も感じさせるグループだった。


ネブワース公演の2日目、ジョン・スクワイアと「Champagne Supernova」を披露

そうしたシーン内への影響について考えると、忘れられない曲が「Cast No Shadow」。ライブ中のMCでも語られる通り、志半ばでザ・ヴァーヴを解散してしまった友人、リチャード・アシュクロフトに捧げられた曲だ。リアムとノエルのデュエットで切々と歌われる様は、二人が袂を分かってから長い時間が経過した今見ると何とも感慨深い。オアシスからの声援が届いたのか、リチャード・アシュクロフトはメンバーを呼び戻してザ・ヴァーヴを再結成。翌97年に発表した起死回生の3作目『Urban Hymns』が全英1位を獲得し、オアシスと共にこの時代を象徴するバンドへと大きく躍進した。

この頃オアシスのUKインディ・シーンに対する影響力は絶大で、明らかにオアシスの影響下にあるノーザン・アップロアーのような若いバンドが続々登場。60s的なメロディをラウドなサウンドに載せるオアシスのスタイルは、この時代のフォーミュラとなった。一方、ライドを解散させたアンディ・ベルは、オアシスを意識した編成のロックンロール・バンド、ハリケーン#1を結成。2枚のアルバムを残して活動を終えると、99年にアンディはオアシスに電撃加入、解散までベーシストとしてバンドを支えていくことになる。

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