決死のカブール脱出、女優兼監督が語った一部始終

Photo by Fereshta Kazemi

アフガニスタン生まれの米女優が経験した恐怖の72時間。その全貌に迫る。

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2021年8月13日朝、アフガニスタン出身の女優兼映画制作者として米国で活動するフェレシュタ・カゼミは、カブールにある自分の事務所で新作の予告編に取り掛かっていた。ちょうどその時、Twitter上で「カンダハル」というワードがトレンドに上がっているのに気づく。そして、アフガニスタン第二の都市がタリバンの手に落ちたことを知った。その日タリバンは、さらに2つの都市を陥落させることとなる。「新作の上映会には誰を招いて、どこの大使館で開催しようかしら」と、カゼミがほんの少し前まで思い描いていた計画は崩れ去り、恐怖と不安が突然襲ってきた。

タリバン攻勢のニュースは、多くのアフガニスタン人に衝撃を与えた。しかしカゼミは、さらに深刻な懸念を抱いていた。彼女は、世界的に見ても史上最悪級の人権抑圧の歴史を持つ国家における女性の権利を主張する有力なフェミニストとして、活動を続けている。アフガニスタンがタリバンの支配下にあった1996年〜2001年には、女性が仕事や教育の機会を奪われて一般生活から切り離され、さらに集団処刑も行われていた。女性の権利に詳しい専門家550人を対象にしたトムソン・ロイター財団の調査によると、ごく最近(2018年)までアフガニスタンは、女性にとって世界で最も危険な国の第2位にランクされていた。

カゼミは最近の初監督作品をはじめ、これまでの配役やプロデュース作品についても、積極的に発言してきた。「これまで携わってきた仕事のほとんどは、人権に関わる作品が多かった」と彼女は言う。「アフガニスタンには人権侵害が蔓延っているから、当然の流れね。アートや映画が取り組むべき重要なテーマだと思う」

映画の中でカゼミは髪の毛を隠さず、肩を出した衣装も着ている。また、スクリーンでキスシーンを披露した初めてのアフガン人女優でもある。アフガニスタンにおけるレイプ問題を取り上げた『The Icy Sun』(2013年)では主役を演じ、レイプ被害者が投獄されたり、レイプ犯と強制的に結婚させられるような文化に疑問を投げかけた。彼女を先駆者だと評価する声もあれば、殺害の脅迫を受けることもあった。

アフガニスタンが表面上は民主主義国家だった時代でも、彼女のすべての行動にはある程度の危険が伴った。しかしタリバン支配下のアフガニスタンでは、死を意味する可能性すらある。

自分の故国がわずか72時間のうちにみるみる崩壊していく中で、カゼミは間一髪で難を逃れた。彼女はローリングストーン誌に、脱出劇の一部始終を語ってくれた。

Translated by Smokva Tokyo

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