BREIMENの高木祥太が語る、私小説的な歌の世界と音楽ルーツ

「俺はたぶん、一生吸っているだろうなというくらいタバコを愛していますね。これは自論なんですが、本質的に、タバコとコーヒーとビールって美味しくないと思うんですよ(笑)。初めて口にした時、どれも『美味い』とは思わないじゃないですか。嗜んでいるうちに、少しずつその味がわかってくるというか。タバコだったら“苦味”の先の“甘み”だったり、ビールだったら“爽快感”だったり。そうするともう、やめられない(笑)。あと、僕はジブリ映画の喫煙シーンが大好きなんですよ。『風立ちぬ』とかひっきりなしに吸っているし、それが絵になる。ジブリってゴハンを食べるシーンもいいし、体に何かを摂取している時の描写が上手いんですよね。それに憧れて吸っているところもありますね」

それにしても、私小説的な歌詞の書き方といい、音楽家としての覚悟といい、タバコに対する独特の見解といい、高木祥太という男にはどこか「昔ながらのアーティスト」と形容したくなるような雰囲気が漂っている。それは、フラメンコギタリストの父親と、フルート奏者の母親のもとで育ったことも影響しているのだろうか。

「それはあると思いますね。親父は毎晩、ジャズライブハウスに出て取っ払いのギャラで生活していたわけで。固定給ではもちろんない、“その日暮らし”の親をめちゃめちゃかっこいいと思っていました。そんな父と母の周りに集まってくる、食えないノイズミュージシャンとかをずっと見てきたし、『好きなことやらなきゃ意味がないでしょ』という考えはきっと小さい時からあったのだと思います」


Photo = Mitsuru Nishimura

現在は映像作家の2025や、BREIMENのマネージャーらと共同生活を営む高木。そうしたライフスタイルも、両親からの影響は大きいという。

「そもそも今作『Play time isn’t over』も、2025と遊びで作ったスパイアクション映画『Play time is over』がモチーフになって生まれたものですし。シェアハウスと言うよりは、行き場がなくなった人たちが行き着く場所というか(笑)。常に人が入れ替わっているし、ここから何か新しいクリエイティブが生まれるような、トキワ荘のような空間になったらいいなと思っています」

こうして話を聞いていると、あらゆるジャンルを取り込みながら進化を続けていくBREIMENの音楽性と、様々な人との出会いの中で形成されていった高木祥太の人間性は、密接に結びついていることがよく分かる。

「結局、人が好きなんですよね。音楽も、その人の人間性が出ているものが好きだし。例えばTempalayやTENDREも、それを奏でている奴らが好きだから音楽を好きになったのか、音楽そのものが好きだから彼らのことを好きになったのか、もはやわからないという(笑)。BREIMENを始める前は、『いろんな人とやりたい』と思っていたんですよ。ジャズミュージシャンも、固定バンドを作らずいろんな人とセッションするじゃないですか。親父のそういう姿を見て、どこかで憧れていたのかもしれないですね、今気づいたけど(笑)。そうやって流動していく中で、変わらない自分のスタンスを大事にしたいと思っているんです」

自ら「飽きっぽい」と認める高木が、それでも今は固定メンバーとともにBREIMENとして活動しているのは、メンバー全員がサポートメンバーとして常に刺激を受けアップデートを続けているからだという。

「だからこそ今回、『TITY』とはまた全然違うアルバムができたわけですから。それと、前作は今まで作りためていた曲の寄せ集めだったのに対し、『Play time isn’t over』は一から書き下ろした曲で構成されているんですよ。アルバム1枚、通して聴いたときに気づくような仕掛けを散りばめる楽しさなどを覚えたので、次もやっぱり“アルバム”を作りたい。曲の作り方みたいなものは、今作でなんとなく掴んだつもりでいるので期待していてほしいです。ただ、しばらくは『Play time isn’t over』を作った余韻に浸らせてもらおうかな、タバコを吸いながら(笑)」


高木祥太
2014年にBREIMENを結成。メンバー・チェンジを経て2018年7月より現体制の5人組となる(高木はヴォーカル・ベースを担当)。メンバーそれぞれが数多くのアーティストのサポートアクトを勤め、高木自身もCHARA、Tempalay、TENDREなどに参加。2020年2月にリリースしたBREIMENの1stアルバム『TITY』は、J WAVEのSONAR TRAXやTuneCoreの independentAFに選出された。2021年5月には2ndアルバム『Play time isn’t over』をリリース。
https://brei.men/


『Play time isn’t over』
BREIMEN
SPACE SHOWER MUSIC
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