手拍子のリズムパターン、クイーンやスライの名曲から鳥居真道が徹底考察

手拍子にはどこか楽しげな響きがあります。「幸せなら手をたたこう」という歌の刷り込みなのかもしれません。そもそも拍手というものは相手を讃えてするものです。私たちは手を叩く音をポジティブに捉えているといえるでしょう。とはいえ、例えば「帰れ」コールをしながら手拍子を打てば、相手を囃し立て、追い詰める効果を持つので、一概にポジティブとはいえないかもしれません。

拍手や手拍子は基本的に大勢でするものです。何かの集会で誰かが自己紹介などしたときに自分だけ拍手してしまって、その後まばらな拍手が続き、結局しぼんでいってしまったときなどなんとなく気まずく感じられます。拍子には調和が求められます。

誰かのライブを見に行ったときにボーカルの人などが手拍子を始めたら後に続こうと思うのが自然です。それは単に儀礼的なものすぎず、自発的な感情表現とはいえないかもしれませんが、実際に手拍子をしてみると楽しい雰囲気になります。

手のひらは私たちにとってもっとも身近な楽器です。それをいうなら声のほうが身近では? と思う人がいるかもしれません。人の声と比べると手拍子の音には個体差がありません。差異がないわけではないが、あまり意識されません。手拍子には匿名性が担保されているように感じます。私は小心者なので、ライブに観客として参加しているときに、「イエーア!」とか「よっ!」と声を発せられません。たまにステージから客席に降りてきて客にマイクを向ける人がいますが、そういう場面に居合わせるとドキドキして冷や汗が出てきてしまいます。いくら求められようが基本的にシンガロングもしません。校歌も口パクするような人間でした。けれども参加を促されたら手拍子します。匿名性があるからこそです。

鳥居みゆきはテイッシュを口に含んでそのテイッシュの商品名を言い当てるという特技を持っています。人の足音なんかは案外癖があるから聞き分けられたりもします。職場で作業しているときに、足音を聞いて面倒な奴が接近していることに気が付き身構えることがあると思います。手拍子に関しても研ぎ澄ませていけば誰の手拍子なのかわかるかもしれません。けれどもさしあたりそんな能力はありません。

Rolling Stone Japan 編集部

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