手拍子のリズムパターン、クイーンやスライの名曲から鳥居真道が徹底考察

手拍子の音自体は匿名的であるけれど、タイミングには個性が現れます。手拍子は一見簡単そうですが、本気で取り組むとなかなか難しい。実際、レコーディングで手拍子をしたことがありますが、なかなか様にならないのです。手拍子にはその人固有のリズムに対する感性が如実に現れるといって良いでしょう。

手拍子が使われた曲は無数存在します。これを数え上げることはおそらく不可能だと思われます。AIの技術が進展したら巨大なデータベースがいつかできるかもしれません。現時点ではそういったものは存在しないので、記憶を頼りに手拍子が登場する曲をまとめてみました。このリストを眺めていたところ、なんだか分類できそうな気がしてきました。今回は手拍子のパターン別にみていこうと思います。

パターン1「バックビート」

もっとも標準的なのは、2拍目、4拍目のバックビートで手拍子を打つパターンではないでしょうか。このパターンを代表する曲がクイーンの「We Will Rock You」です。ご存知だと思いますが、この曲は終盤に登場するギターを除いて楽器が使われていません。足踏みと手拍子、そして声だけで構成された曲です。作者のブライアン・メイはオーディエンスが参加できる曲を作りたいと考えて作ったそうです。映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもそんな台詞があったように記憶しています。



音源で聴くことのできる例の「ドンドンパン」というサウンドですが、メイによれば大人数でやっている雰囲気を出すためにエコーを使ったそうです。ただしそれは反響のためではなく、距離による音の遅れを表現するために使ったそうなのです。そのためにエコーのディレイタイムを素数に設定らしいのですが、素数にすることでどのような効果があるのか私にはさっぱりわかりません。

バックビートで手拍子の例は枚挙にいとまがありませんが、ぱっと思いつくところだと、ファッツ・ドミノの「I’m Walkin’」とサーストン・ハリスの「Little Bitty Pretty One」があります。どちらの曲もアール・パーマーがドラムを叩いています。この2曲をハーフタイムで解釈するとリー・ドーシーの「Get Out of My Life, Woman」のようなファンク・ビートになるというのが持論なのですが、その説明は今回の趣旨から外れるので別の機会に譲りたいと思います。





その他の例では、T・レックスの「Get It On」やヴァン・モリソンの「Brown Eyed Girl」、フェイセズの「Ooh La La」、ジョン・メレンキャンプの「Jack & Diane」などがあります。無限にあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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